前立腺がんの治療法として、待機療法、手術療法、放射線療法、ホルモン療法、化学療法などがあげられます。「待機」とは何もしないことではありません。前立腺がんの中には増殖速度が非常に遅いがんがあり、状況によってはすぐに治療しなくてもよい場合があります。このような場合はPSA検査でがんの進み具合や勢いを監視しますが、これを待機療法と呼んでいます。
手術療法(根治的前立腺摘除術)は早期であれば完治の可能性が高い治療法ですが、術後の合併症として尿失禁や勃起障害などが見られます。最近は内視鏡を使い開腹せずに手術を行うことも増えつつあります。
放射線療法は放射線でがん細胞を死滅させるのですが、体外から照射する外照射法と、放射線を出す線源を前立腺に埋め込む組織内照射法があります。小線源療法は主に早期がんが対象です。治療効果が大きく副作用も少ない治療ですが、行っているところは全国で100施設(2009年7月末現在)と、いまだ少ない状況です。
ホルモン療法には、男性ホルモンの産生を抑える方法と男性ホルモンの作用をブロックする方法とがあり、双方を組み合わせて行うこともあります。
以上のような治療法で効果が得られない進行がんには、注射による化学療法が用いられています。抗がん剤治療には副作用が見られる場合がありますが、あらかじめ対策を立てておくことで症状の悪化を防ぐことができます。
すべての状況に効果のある治療法は、残念ながらありません。また、各治療法に利点と欠点があります。したがって、ご自分の病状や生活の状況、人生観などに合わせて治療法を選択していくことになります。「Aさんには良かった治療が、Bさんにも良いとは限らない」ことも、十分ご理解いただきたいところです。
前立腺がん、あるいは食道がんになった親族がいるので、自分もがんになりやすいかもしれないと思っていました。そこでPSA検査を半年に1度行っていたところ、2007年春にPSA値が4.0を超え、触診により前立腺が大きくなっていることがわかりました。その半年後のPSA値は5.08、さらに半年後には7.26となったので、生検で12カ所採取。結果、4カ所にがんが見つかりました。
将棋にも通じるところがありますが、病気の治療は、現在の形勢を把握することが大事です。病気になったことと向き合い、発病したことによる何らかのマイナスを最小限にとどめること。治療法を決めるに当たり、インターネットや関係図書で調べ、知人の意見を聞き、泌尿器科や放射線科の医師とよく話し合いました。
そうした上で、私は放射線療法を選択しました。週3回のペースで通院して計15回外照射を行い、そのあと4日ほど入院して集中的な照射(高線量率組織内照射)を行いました。
病は気からといいますから、治療中も冗談を言っては医師や看護師を笑わせていました。それが去年の12月のこと。まだ1年たっていませんが、順調に回復しています。
がんになったことは不幸ではあるけれども、恐れるに足らず。これはPSA検査を定期的に受け、治療において正しい判断ができたと思うから言えることです。いろんな情報を整理し、自分自身で治療法を選ぶ。決めたら動かさない。副作用、合併症は仕方のないこととして自分の責任のもとに受けとめられたらいいと思います。
前立腺がんを経験し、患者にとって一番大事なのは、笑いであるとつくづく思います。
1. 前立腺がんってどういう病気? | 3. パネルディスカッション |
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