ダットスキャン静注 症例アトラス Definiteレビー小体型認知症(DLB)症例提供愛知医科大学/小山田記念温泉病院 愛知医科大学 加齢医科学研究所 岩崎 靖/吉田 眞理
  • 警告・禁忌を含む使用上の注意等は、添付文書をご参照ください。
  • 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
  • DaTViewによる画像解析は、核医学画像解析ソフトウェア「medi+FALCON」を使用することで実施可能です。

  • ※認証番号:301ADBZX00045000

診断病名 全経過6年のDefinite DLB

80歳台前半 男性
既往歴 心房細動、高血圧症、肺癌術後
家族歴 姉がパーキンソン病
現病歴と
経過
X-6年 歩行障害、動作緩慢、自覚のある幻視(カラスや子供)で発症。
X-5年 心臓交感神経シンチグラフィは集積低下していた。 Probable DLBと診断。
X-3年 動作緩慢、軽度の両側の筋固縮、小声、嗄声。軽介助で歩行可。
振戦(-)、左右差(-)、起立性低血圧(-)。
X-2年 明瞭な幻視、肺炎の反復、経鼻経管栄養 MMSE:19/30点。
X-1年2カ月 脳血流SPECTでは後部帯状回、後頭葉、頭頂葉の血流低下。
X年 誤嚥性肺炎、心不全の悪化により死亡。
特 徴 ・初期から幻視が目立ち、運動障害は比較的軽度。
・幻視以外の精神症状は目立たなかった。
MRI X-1年2カ月
T1強調像

全体的にびまん性の軽度萎縮があるが、海馬の萎縮は強くない。

 
ダットスキャン®静注(DaTSCAN) X-5カ月

DaTView 結果画像

Original 画像

※SBRは使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって変動します。

左優位の高度集積低下を認める。

神経病理学的診断1) 1)NEUROLOGY 2005; 65: 1863-1872
病理学的亜型

びまん性新皮質型(Diffuse neocortical type pathology)レビー小体型認知症

  脳幹部領域 前脳基底核/辺縁系領域 新皮質領域
  Ⅸ-Ⅹ 青斑核 黒質 マイネルト
基底核
扁桃核 経嗅
内野
帯状回 側頭葉 前頭葉 頭頂葉
レビー病理の
スコア
3 3 3 3 3 3 3 2 1 2

† Ⅸ-Ⅹ:舌咽迷走神経

レビー病理のスコア 0: None 1: Mild 2: Moderate 3: Severe 4: Very severe

老人性変化の病理

NFT: Braak stageⅡ
老人斑: CERAD B
嗜銀顆粒性認知症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、
皮質基底核変性症の病理は認めない。

血管性病変

粗大なものは認めない。

神経細胞の脱落
黒質(本例 左側)Kluver-Barrera染色強い神経細胞の脱落を認める黒質(コントロール 左側)Kluver-Barrera染色基底核 冠状断(本例 左側)TH免疫染色被殻、尾状核いずれも強いTH染色性低下被殻 尾状核基底核 冠状断(コントロール 左側)TH免疫染色TH染色で良く染まっている
				Kluver-Barrera染色: 髄鞘染色。TH免疫染色: ドパミン合成酵素のTH(チロシン水酸化酵素)をドパミン作動性神経細胞のマーカーとしてTHに対する抗体を用いて行う免疫染色。
まとめ

脳幹から辺縁系、さらに新皮質(中前頭回、中側頭回、下頭頂小葉)にかけて非常に多くのレビー小体が広がっており、病理評価の基準ではびまん性新皮質型と考えられた。神経原線維変化はBraak stageⅡで老人斑の沈着はそれほど強くなく、アルツハイマー型認知症としての病理像の可能性は非常に低いと判定した。

本例の幻視は、レビー小体型認知症(DLB)による神経症状であると考えられた。
運動障害は比較的軽度のDLBであったが、黒質の神経細胞脱落は中等度以上で、被殻のTH陽性線維の減少も認めた。これらのことは、DaTSCANの集積低下を示す背景病理であると考えられた。

 

DaTSCAN 収集・再構成条件
機種名 シーメンス SymbiaE
データ処理装置 e.soft
使用コリメータ LMEGP
撮像開始時間 投与180分後
収集モード continuous
収集角度 4度/step
ステップ数 45
収集時間 28min
収集拡大率 1.45
マトリックスサイズ 128×128
ピクセルサイズ 3.3mm
スライス厚 3.3mm
前処理フィルタ Gaussian FWHM7mm
再構成フィルタ
オーダー
カットオフ周波数
画像再構成法 OSEM(iteration:8 subset:6)
減弱補正 なし
散乱線補正 なし