ダットスキャン読影のポイントヘッダ
  • 「警告・禁忌等を含む使用上の注意」等については添付文書 ご参照ください。
  • 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
  • DaTViewによる画像解析は、「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」を使用することで実施可能です。(※認証番号:301ADBZX00045000)
  • 本コンテンツで使用している画像の提供元(一部を除く):東邦大学医療センター大森病院
  • ダットスキャン®静注のSPECT画像における定量的指標であるSBR(Specific Binding Ratio)は使用機種、コリメータ、画像再構成法、被験者の年齢等によって異なりますので、その解釈には十分ご注意ください。

ダットスキャン読影のポイント (実践編)

実践編では、臨床現場で経験してきたケースを基に、読影のアプローチを紹介する。

   

症例概要

70歳台後半男性
半年前より右上肢に安静時振戦が出現

 
 

視覚的評価

線条体集積:両側線条体集積や集積形状は保たれ、BG集積亢進も明らかでない。

集積左右差:線条体はほぼ対称性に分布するも、左被殻後部外側に限局的な低集積が疑われる。

 
 

定量的評価(SBRBolt)

SBRBolt R=4.50, L=4.17, Ave=4.34, AI=7.6%
年齢相当に集積は保たれるも、軽度の左右差がみられ、左被殻後部外側集積低下に視覚評価との一致性がみられる。

 
 

臨床症状の確認(+器質的病変の影響)

右側上肢に運動症状があり、DATイメージングの結果から左線条体が責任病変と考えられる。
MRI上では基底核に虚血変化はない。

 
   

まとめ

DATイメージング、臨床症状から初期PDを疑う。

POINT
線条体全体の集積が保たれていても、症状に合致する限局性低集積は 早期PD検出の可能性あり
   

症例概要

80歳台前半男性
脳血管性パーキンソニズムとして経過観察中に症状が増悪

 
 

視覚的評価

線条体集積 : 右線条体に限局性集積欠損が疑われる。BG集積が目立つので、左被殻後部での軽度低集積の可能性がある。

集積左右差:被殻後部は右側優位となる集積低下がみられるが、尾状核頭、被殻前部では左右差はみられない。

 
 

定量的評価(SBRBolt)

SBRBolt R=3.07, L=3.78, Ave=3.42, AI=20.7%
右線条体での集積低下が認められたが、左線条体でも軽度低集積の可能性がある。

 
 

臨床症状の確認(+器質的病変の影響)

運動症状は右側優位であり、症状と視覚的所見との側方性が不一致。
しかし、右被殻後部に梗塞巣を認め、左被殻後部低集積が症状と関連している可能性が高い。

 
   

まとめ

血管障害により右優位の被殻集積低下を示したが、症状との関連性からVPではなく、PSにCVDが合併してDATイメージング所見と臨床症状との不一致が生じたと推察される。

POINT
血管障害の存在と線条体の限局性集積低下から、脳血管性パーキンソニズムを疑う加えて定量的評価が血管障害後のドパミン神経変性・脱落の発現を示唆

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症例概要

70歳台後半女性
歩行障害、姿勢障害がみられるが、振戦、固縮などは明らかでない。

 
 

視覚的評価

線条体集積:両側線条体集積形状は保持され、限局的な低集積はない。
大脳皮質などの非特異的集積も著明な亢進ではない。

集積左右差:わずかに右側被殻後部で低集積であるが、明瞭な左右差はない。

 
 

定量的評価(SBRBolt)

SBRBolt R=3.56, L=3.73, Ave=3.65, AI=4.7%
左右差のない軽度集積低下を示した。

 
 

臨床症状の確認(+器質的病変の影響)

運動障害の左右差が明確でないことからDATイメージングにおける線条体集積低下所見とは矛盾しない。
MRIでは責任病変となり得る血管障害も明らかでない。

 
   

まとめ

画像からの鑑別は困難で臨床所見が必要となるも、PSを疑う。

POINT
両側被殻集積軽度低下例では、視覚的評価でBG亢進を捉えにくく、 定量的な指標が画像評価の助けとなる
SPECT画像のQC Q&A
SPECT所見 状況 対策
線条体集積、非特異的集積ともに、びまん性に不均一な集積 データ量が不足
(有効な集積が得られず、また画像の信頼性が乏しい)
撮像時間を増やす
収集時のステップ数を減らし、1ステップの収集時間を延ばす
収集時の拡大率を下げる
一様な高集積を示す 画像上、集積が過飽和している(画像表示、あるいはフィルタ処理が不適当) フィルターのカットオフ値を上げる
画像表示の上限値を上げる
直線性の高いカラースケールへの変更
収集時のステップ数を増やし、1ステップの収集時間を減らす
収集時の拡大率を上げる
BGの描出がない 線条体のみ描出 散乱補正の影響
感度不足 高分解能型コリメータ使用によるカウント不足の可能性があるため、汎用型コリメータを使う
定量評価DaTView : Southampton法11)/ SBR測定に関する注意
Oblique画像の作成 BGへの集積が低い場合AC-PC面に平行な横断像を作成することが難しい。
こうした例では横断像を決定する処理段階だけでもBGが明瞭となるカラースケール(Rainbow(T,H,S,P))を使うと正確に横断像を作成できる。
線条体・
参照ROI設定
全脳ROIトレースの
ための閾値設定
線条体集積低下によるBG集積上昇があると、推奨された閾値によって全脳ROIを設定しても、正確にはROIを作成できないので調整が必要となる。また、閾値によるROI外縁抽出では前頭葉でROIが外側に寄り、後頭葉で内側に寄る傾向があるが、ROI内に脳外構造の混入を避けるために前頭葉を中心に最適な閾値を設定したい。
線条体ROIの設定 萎縮が強い例でシルビウス裂や大脳縦裂の開大がある場合、左右半球で萎縮が異なる場合などでは、ROIの中心に線条体を置かずに前後・左右に移動する左右非対称性にROIを設定するなどの工夫が必要となる。
結果画像表示 BG集積を使って定量的に画像処理されているので、線条体集積分布を観察するために高集積のコントラストが良いカラースケール(Hotiron、Hotmetal(G)など)が適す。
11) Tossici-Bolt et al: Quantification of [123I]-FP-CIT SPECT brain images: an accurate technique for measurement of the specific binding ration. EJNMMI 33:1491-1499,2006

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