心筋血流SPECTをマスターし活用するために
虚血性心疾患を適確に管理するためには、患者個々の臨床情報を把握した上で、適切な検査を行い、QOLと予後の改善が図れる治療法を選択しなければならない。冠動脈疾患治療の基本は生活習慣の改善と薬物療法であり、血行再建術は、それによってQOLと予後の改善が図れると判断される時に初めて適応となる。AHA/ACCなど6学会が合同で作成した冠動脈血行再建の適切な適応基準によれば、1.患者の症状(狭心症状の重症度)、2.虚血に対する十分な薬物治療の有無、3.非侵襲的検査により示される虚血の重症度 、4.造影検査による冠動脈病変の形態、に基づいて行うべきと提唱されている。3,4からわかるように虚血性心疾患管理における画像診断の意義は大きい。
近年の冠動脈CTの進歩が、虚血性心疾患の診断手順を変えているが、冠動脈CTはあくまでも冠動脈の形態評価であり、心筋虚血を適切に評価することはできない。一方で、心筋血流SPECTには心筋虚血評価あるいは予後予測において豊富なエビデンスの蓄積がある。こういった心筋血流SPECTを適確に活用するには、心筋血流SPECTの理解が必要である。検査方法、画像の意味、表示法、検査法独自の偽陽性・偽陰性などのアーチファクトを含めた基礎を理解する必要がある。そこで、これらの基本的な事項を詳細に記載し、診療に必要なエッセンスをまとめた手引書の作成を企画した。心臓核医学に関する研究会である『ニュータウンカンファレンス』で取り上げてきたRead with the Expertsをベースに、二人のエキスパートの先生の診断ノウハウが織り込まれて本冊子は完成した。
心臓核医学検査、とりわけ心筋血流SPECTは循環器医にとって日常臨床で必要不可欠な検査法の一つである。本書を参考にして、経験を積んでいただき、心臓核医学検査を診療に活かしていただければ幸いである。
『ニュータウンカンファレンス』 代表世話人
東京医科大学 第二内科 主任教授 山科 章
日本医科大学 放射線医学 主任教授 汲田 伸一郎
2013年7月
EDV | 左室拡張末期容量 | left ventricular end diastolic volume |
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ESV | 左室収縮末期容量 | left ventricular end systolic volume |
LVEF | 左室駆出率 | left ventricular ejection fraction |
QGS | 心電図同期SPECT解析ソフトウェア | quantitative gated SPECT software |
SSS | 負荷時合計欠損スコア | summed stress score |
SRS | 安静時合計欠損スコア | summed rest score |
SDS | 心筋虚血スコア | summed difference score |
TID | (負荷時)一過性虚血性内腔拡大 | transient ischemic dilatation |
WOR | 心筋洗い出し率 | washout rate |