パーヒューザミン注/ダットスキャン静注 パーキンソン症候群 症例アトラスシリーズ 進行性核上性麻痺(PSP-PAGF) 症例提供 順天堂大学医学部附属順天堂医院 順天堂大学医学部附属順天堂医院 脳神経内科 波田野 琢
「警告・禁忌を含む使用上の注意」等については添付文書を参照ください。
紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
3D-SSP/3D-SSPTomo/DaTViewによる画像解析は、核医学画像解析ソフトウェアmedi+FALCON*を使用する事で実施可能です。
(*認証番号:301ADBZX00045000)
本コンテンツで使用している画像提供元:順天堂大学医学部附属順天堂医院

診断病名 進行性核上性麻痺(PSP-PAGF型)

60歳代後半 男性
主 訴 歩行障害。
既往歴 X-2年頃 : 高血圧を指摘。
現病歴
X-1年頃 歩行時足の運びが悪いことを自覚。
X年2月 転倒し近医外科を受診。歩行障害があると診断され、神経内科を紹介受診。
眼球運動制限はない。四肢、全体の無動、四肢の固縮を認める。すくみ足が目立つ歩行障害があるが、継足歩行は可能で姿勢反射障害を認めない。振戦は認めない。パーキンソン病と診断されL-ドパ製剤およびセレギリンを投与。
X年5月 L-ドパ製剤の反応が悪く900mgまで増量されるが、効果は乏しい。
パーキンソン病と非典型パーキンソン病の鑑別目的で当院紹介受診。
初診時神経学的所見
前頭葉兆候はない。Applause testは正確に行え、眼球運動制限はないが、体幹優位の固縮を認める。
全体的な無動はあり、姿勢保持障害と姿勢反射障害を認める。すくみ足が強い歩行障害を認めるが、継足歩行は可能であり、自転車にも乗れた。振戦は認めない。
MMSE:26/30点
画像検査所見
頭部MRIでは明らかな萎縮はないが、パーヒューザミン®注(123I-IMP)SPECTでは左優位に両側の前頭葉、側頭葉および線条体の血流低下を認め、 ダットスキャン®静注(DaTSCAN)では両側の線条体への強い集積低下を認めた。
治療・経過 L-ドパ製剤900mgでは効果がなく、アミトリプチリン30mg、アマンタジン200mgを併用するが効果はなく症状は徐々に進行している。
画像検査所見
MRI

T1強調像
T1強調像A画像

T1強調像B画像
T1強調像C画像

メラニン強調像
メラニン強調像画像

 

画像検査所見

頭部MRI T1強調画像軸位断(A)、矢状断(B)で脳幹部の萎縮は明らかではないが、第三脳室の軽度開大(C)を認める。メラニン強調画像では黒質緻密部のニューロメラニンの脱落を認める(D)。

 
パーヒューザミン®注(123I-IMP)

Original 画像
Original画像
 

3D-SSP/Tomographic解析画像(血流画像/Decrease Z-score画像)
3D-SSP/Tomographic解析画像(血流画像/Decrease Z-score画像)

画像検査所見

左優位に両側前頭葉、側頭葉および線条体の血流低下を認める。

ダットスキャン®静注(DaTSCAN)

Original 画像
Original画像
 

DaTView 結果画像
DaTView結果画像

※SBRは使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって変動します。

画像検査所見

線条体への集積はドット状であった。
SBRは右0.84、左0.71であり高度の黒質線条体神経の障害が考えられる。

まとめ

すくみが目立つ歩行障害および、固縮を認め、前頭葉障害や認知症、眼球運動制限はなく、継足歩行や自転車に乗ることが可能であった。しかし、抗パーキンソン病薬の効果が乏しく、進行が比較的速かったためatypical parkinsonismとの鑑別が必要な症例であった。
進行性核上性麻痺を診断するためには、垂直方向性眼球運動制限の存在および頭部MRIにおける中脳萎縮や第三脳室の拡大が重要であるがPAGF型やパーキンソン病類似型では経過が早期のうちはこれらの所見を認めない場合もあり診断が難しい。また、鑑別として脳血管障害性パーキンソニズムなども考慮する必要がある。
そこで、DaTSCAN SPECTを実施すると黒質線条体の障害が示され、123I-IMP SPECTで前頭葉および線条体の血流低下が確認され、本症例は進行性核上性麻痺のPAGF型と診断した。
進行性核上性麻痺の診断において、特徴的な所見が乏しい場合、脳血流シンチグラフィーおよびDaTSCANの検討は有用である。

SPECT 収集・再構成条件
  パーヒューザミン® ダットスキャン®静注
機種名 シーメンスSymbiaE/SymbiaS シーメンスSymbiaE/SymbiaS
データ処理装置 syngo syngo
使用コリメータ LMEGP LMEGP
投与量 222MBq 167MBq
撮像開始時間 投与 20分後 投与 210分後
収集モード Continuous Continuous
収集角度 4度/step 4度/step
ステップ数 45 45
収集時間 20min(2.5min×8) 25min(2.5min×10)
収集拡大率 1.45 1.45
マトリックスサイズ 128×128 128×128
ピクセルサイズ 3.3mm 3.3mm
スライス厚 3.3mm 3.3mm
前処理フィルタ Butterworth Gaussian FWHM 7mm
再構成フィルタ ramp
オーダー 8
カットオフ周波数 0.35Nyquist
画像再構成法 FBP Flash 3D(Iteration:9, Subset:10)
減弱補正 Chang(μ=0.10cm-1) なし
散乱線補正 なし なし