主な核医学検査_心臓

心筋血流シンチグラフィ

使用される放射性医薬品

201TlCl(塩化タリウム)【商品名:塩化タリウム(201Tl)注NMP


99mTc-tetrofosmin(テトロホスミン)【商品名:マイオビュー®注シリンジマイオビュー®「注射用」

検査の原理

201TlClはK(カリウム)と類似した体内挙動を示すことが知られています。正常心筋では心筋細胞膜のNa‐Kポンプを介して能動輸送により心筋細胞内に取り込まれます。
99mTc-tetrofosminは、心筋細胞膜およびミトコンドリアを介した電位依存性の受動拡散によって心筋細胞内に取り込まれます。
いずれも心筋への取り込みは、冠状動脈の血流に比例します。安静の状態では捉えにくい虚血を検出するために負荷検査が実施されます。

検査の流れ、注意事項

エルゴメータやトレッドミルを用いた運動負荷、アデノシンやジピリダモールを用いた薬剤負荷を実施し、負荷心筋シンチグラフィを撮像します。201TlClは負荷時の撮像の3~4時間後にもう一度撮像することで安静時に近い画像が得られます。99mTc-tetrofosminは再分布現象が無く、負荷時と安静時の2回の薬剤投与が必要です。負荷検査として十分な負荷が与えられることが、虚血検出の鍵です。負荷による正常心筋血流の増加が、虚血部とのコントラストとして検出されるのです。負荷に影響を及ぼす薬剤の制限や、201TlClでは検査前の絶食も重要な要素です。

解析方法、定量法

SPECTによる心筋の3断面画像を作成して、虚血の有無を診断することが通常ですが、Polar Map(2次元極座標表示)により心尖部から心基部までを1枚の画像で表現することもできます。負荷時、安静時の血流(Perfusion)および洗出し率(Washout Rate)やSubtractionのMapを作成します。
QGS(Quantitative Gated SPECT)等の解析ソフトが普及したため、心電図同期SPECTを施行して左心室の時相ごとの画像を作成し、3次元ボリュームデータから左室容積曲線、拡張末期容積、収縮末期容積、駆出率(Ejection Fraction)等の各種心機能評価ができるようになりました。

 

心筋SPECTによる心筋の3断面画像

QGS画像

狭心症例でのQGS解析例
画像提供元:東邦大学医療センター大森病院
臨床的意義
  • 急性および陳旧性心筋梗塞の診断、狭心症の診断に有用です。
  • 虚血性病変部位の鑑別に使用されます。
  • 心筋生存能(viability)評価に有用です。
  • PCI(経皮的冠動脈インターベンション術)の治療効果の判定に有用です。
  • 心筋炎、心筋症、サルコイドーシス、先天性心疾患などの心筋障害の判定に使用されます。

 

 

参考資料・関連ページ

 

核医学検査の手引き 心臓核医学検査 検査を受けるにあたって

やじるし PDF(768KB)