脳血流シンチグラフィ
123I-IMP 【商品名:パーヒューザミン®注】
99mTc-HMPAO 【商品名:セレブロテック®キット】
123I-IMPはいったん肺に取り込まれた後、血液脳関門を通過して初回循環でほぼ100%が脳組織に取り込まれます。その後、緩徐に洗い出されますが投与量の約8%が脳組織に集積します。集積機序は化学的小塞栓子と考えられています。
一方、99mTc-HMPAOは、血液脳関門を通過して脳組織内で水溶性に代謝され、長時間脳内に留まります。投与量の約5%が脳組織に集積します。
これらの脳内分布は局所脳血流量に比例するため、脳血流分布イメージが得られます。
通常、閉眼安静状態で薬剤を静注し、脳組織への集積を待ってSPECTを撮像します。高分解能型のコリメータを用いて、脳血流分布を正確に画像化します。
SPECT画像は、横断断層像、冠状断層像および矢状断層像の3方向から表示されます。正常集積部位と比較して、血流の変化を範囲および程度から判断して病変部位を診断します。視覚的な診断には限界があり、また、経験に依存することも多くなります。そこで、血流低下や増加を正常者から求めたデータベースと比較して、統計学的に評価する3D-SSP(3D Stereotactic Surface Projections)が開発され、急速に普及しています。
脳血流量を正確に測定するには、123I-IMPを用いた持続動脈採血法(マイクロスフェア法)や1点動脈採血法(ARG法)が有用です。123I-IMPを用いた非採血法(NIMS法、グラフプロット法)や、99mTc-HMPAOを用いた非採血法(パトラックプロット法)も使用できます。
- 脳梗塞、脳動脈閉塞・狭窄、一過性脳虚血発作、モヤモヤ病、認知症、てんかん、脳炎、脳腫瘍、精神疾患などの診断に利用されます。
- 脳循環予備能の評価は、脳血管障害の予後の評価、バイパス術の適応決定や治療効果の判定などに利用されます。
- 認知症の診断などにおいて病変部の広がりの把握や疾患の鑑別に利用されます。
Bypass(バイパス)術前後の123I-IMP SPECT(ARG法)による評価
術前
安静時の左中大脳動脈領域の局所脳血流量は33ml/100g/min前後(上段左)で、正常例の平均値の80%以下であった。Diamox負荷時の同領域の脳血流量は29ml/100g/min(-11%)(上段右)でsteal現象を認めた。
術後
安静時脳血流が37ml/100g/min(下段左)へと増加し、血管反応性が+16%へと増加した。
脳血流SPECT定量シンチグラム集(監修:中村記念病院 脳神経外科 中川原譲二先生)より引用
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核医学検査の手引き
「脳血流シンチグラフィ検査を受けるにあたって」
監修:日本脳神経核医学研究会
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