「がん・統計白書2012」によると、2010年の前立腺がんによる死亡者数は1万1,600人。2025年には1万5千人を超えると予想されています。多くの自治体が、前立腺がんの早期発見に有効なPSA検査を取り入れているものの、日本人男性の受診率は依然低い数字にとどまるのが現状です。
ブルークローバー・キャンペーンは9月17日〜24日を、日本における「前立腺がん啓発週間」と設定。複数の医療機関と協力し、無料PSA検査の提供のほか、前立腺がんの基本的知識を広く発信しました。昨年に続いてのキャンペーンは、その協力医療機関を大幅に増やし、広く全国で展開されました。
竹澤豊先生を座長に迎えて開催された市民公開講座。悦永徹先生が講師を務め、前立腺がんについて、①疫学②診断③治療と、3つのテーマに大別して話題を展開します。やさしい語り口調はもちろん、なるべく専門用語は使用せず、聴講者にわかりやすい言葉に置き換えての解説を心がけたという悦永先生。PSA検診後の病院での検査や、その後の治療の流れをわかりやすく紹介することにより、不安感をなくして受診してもらいたいと強調します。さらにはキャンペーンのシンボルでもある「ブルークローバー」の花言葉や、ブルークローバー・キャンペーンに込められた意味にも話が及ぶなど、中身の濃い講演時間となりました。
高齢の男性だけでなく、女性や夫婦での参加など、幅広い層で占められた聴講者からは、講演終了後の疑問や相談の投げかけも活発に。それに対する先生からの回答時間も十分に設定されるなど、きめ細かな対応がなされていました。聴講者からは「大変良い事を知りました。これからも開催を希望します」「これからいろいろお世話になりそうです。検査の流れなどがわかり、良かったです」「主人をなんとしても受診させたいと思います」など、好意的な感想も多く寄せられました。前立腺がんの正しい知識と、早期発見の重要性。そして「PSA検査」という言葉だけでも覚えてもらいたい。一人一人が、同院のメッセージを強く感じ取ったことでしょう。
2011年、全国に先駆け、いち早く民間主導の前立腺がん啓発イベントを実施したのが昭和大学。ここから発信された前立腺がん啓発の輪は、今や全国規模に広がりつつあります。3年目となった同大学の公開講座「前立腺がんってどんな病気?−PSAって何ですか?−」は、午前午後あわせて約120人の参加者を集めました。
「前立腺とは?前立腺肥大症のはなし」(小川良雄先生)に始まり、「前立腺がんってどんな病気?」(五十嵐敦先生)、「前立腺がんの予防 PSAって何ですか?」(深貝隆志先生)、「前立腺がんの最新治療」(森田將先生)と、男性にとっては気になる症状「前立腺肥大症」を含め、講義は盛りだくさんの内容。都内だけでなく近隣県からも訪れた参加者は、メモだけでなく画面に映し出されるパワーポイントの写真を撮ったりと熱心な様子で、講義後に行われた各先生への個別質問の時間でも、自分のPSA検査結果を持参して相談に臨む人も。より的確な情報を得ようとする成熟した姿勢が印象的でした。また、16日〜20日の期間中に同大学で実施された無料PSA検診には、約300人が受診に訪れるなど、昨年の160人を大きく上回る成果も得ました。「前立腺がんで苦しむ人をこれ以上増やしたくない」と絶えずメッセージを送り続ける深貝先生の思いは、確実に地域に浸透しています。
これまでも、女性の視点から前立腺がん啓発のメッセージを送るなど、常に新しい啓発アプローチを続ける黒沢病院附属ヘルスパーククリニック。長年、予防医療の意識を地域に浸透させる役割も果たしており、市民公開講座は平日午後3時開催にもかかわらず105人の参加者を得ました。
無料PSA検査に加え、講演とパネル討論の2部構成で行われた市民公開講座。山中英壽先生を座長に、講演は熊坂文成先生による「在宅医療と前立腺がん」、横山友里さん(管理栄養師)による「前立腺がんの予防食レシピ」と新鮮な切り口。「前立腺がんの在宅医療について理解できた」(70歳代女性)、「食事の大切さがわかった」(60歳代男性)という感想も聞かれ、予防意識の高い参加者に講演内容は響いたようです。
続いて黒澤功先生司会のもと、第一部座長の山中先生、熊坂先生、横山さんに加え、女性の立場からNPO法人前立腺がん検診推進ネットワーク理事の黒澤由美子さん、大河原カツヱさんがパネリストとして参加し「前立腺がん予防と女性の役割」をテーマにパネル討論。活発な質疑応答が行われ、予定時間を40分以上超過するほどでした。また展示ブースでは、黒澤先生をはじめ、大勢の職員の出演協力のもと制作したオリジナルPR映像を上映。明るい表情でPSA検査を呼びかける内容に、たくさんの人が足を止めていました。
さらに、隣接エリアの冨岡・甘楽薬剤師会とも連携したのも特筆すべき一つ。熊坂先生の講演をはじめ、各薬局にキャンペーンポスター掲示とパンフレットの陳列を行いました。来局した人に積極的な呼びかけを行うなど、暮らしに根付いた地域薬局の身近さを生かした試みでした。
快晴の下、福岡市のエルガーラホールで行われた市民公開講座「前立腺がん医療の最前線」。50歳代男性が多くを占める参加者235人の中には、夫婦での聴講も目立ちました。
司会に立った内藤誠二先生(日本泌尿器科学会理事長)は、「昔は早期診断・早期治療と言われたものですが、今は早期診断・適切治療です。正しい知識を身につけ、様々な治療の選択肢があることを覚えてください」と参加者にメッセージ。横溝晃先生の「『前立腺がん』って何ですか?」の講演から始まり、入江慎一郎先生の「どうやって診断するのですか?」、立神勝則先生の「どんな治療がありますか?」。導入→診断→治療と、テーマが深掘りされていく構成です。昨年と同時期・同会場で行われた市民公開講座からのリピーターも多く、前立腺がんについて一定の知識を持った人でも、新たな知識を身につけようと参加する積極性も感じられました。
「正しい知識で『良い人生』を送ってほしい」(大島一寛先生:開会あいさつ)、「多くの場合自覚症状のない前立腺がん。だからこそPSA検診が必要」(古賀寛史先生:閉会あいさつ)。そんな思いのこもった2時間半の講演に、参加者も「いろんな治療法の話を聞けて、主治医と相談する考えがまとまった」「病院ではここまで詳しく説明してもらえない。参加してよかった」と感想を述べるなど、みな一様に満足げでした。
前立腺がんの疾患および治療に関しての情報を市民へと発信し、PSA検査を通じて前立腺がんの早期発見につなげたい、との主旨で開催された愛媛前立腺がん市民公開講座。会場となった松山市のひめぎんホールには、午後2時の開場前から早くも開場を待つ参加者の列が。102人の参加者を得た会場では、菅政治先生が座長となり4人の医師による講演がスタート。前立腺がんの疫学から診断についての観点から「前立腺がんってどんな病気?」(矢野明先生)のお話が。その後、治療法による話題に転換し、宮内勇貴先生による「手術療法」の講演、越智誉司先生からは「放射線療法」が、篠森健介先生からは「ホルモン療法」の講演がそれぞれ行われました。
講演後の質疑応答も活発だったように、座長・および講演を務めた各先生も「前立腺がんに対する熱心な参加者の姿勢に、こちらからも精いっぱいこたえないといけないと感じた」と、市民の思いを痛切に受け止めた様子。参加者からは「前立腺がん全般はもちろん、各治療法の長所、短所がよく理解できた」といった意見がある一方、「発病の主要な原因をもう少し詳しく知りたい」や「発病後あるいは手術後の生活の注意点を知りたい」といった要望も。愛媛県下に醸成されつつある前立腺がん理解の機運は、今後、そして来年のキャンペーンへと、きっとつながることでしょう。
酒井英樹先生による開会のあいさつで幕を開けた長崎大学の市民公開講座。NBC SOCIAメディア・ワンを会場に、70人の参加者を集めたイベントのメーンに据えられたキーワードは「前立腺がんに負けないために〜早期発見から最新治療まで〜」です。
酒井先生とフリーアナウンサーの菊野紗史さん司会のもと、「前立腺がんとは」(井川掌先生)の講演で前立腺がんの総論を展開したのち、「診断」(大仁田亨先生)、「治療」(鶴崎俊文先生)、「予防と検診」(竹原浩介先生)の順に話題が展開されていきます。前立腺がんにまつわる質問に先生が回答する「Q&Aコーナー」では、前立腺がんの予防、前立腺がんと前立腺肥大症との関係、PSAと年齢との関係など、参加者から活発な質問が寄せられました。
事前告知の方法としては、前立腺がんにふだん注意を払わない健康な「無関心層」に、PSA検診の啓発を行いたいというねらいもあり、新聞広告や折り込み広告を活用したともいいます。会場には女性の姿も多く見られ、家族ぐるみで前立腺がんのことを知ろうという雰囲気に包まれた同日。すでに前立腺がんの治療を受けている人の参加もあり、予防から治療まで、前立腺がんに関する全般的な理解の場となったようです。来年以降のさらなる集客につながるノウハウも得ながら、長崎での前立腺がん理解の輪は確実に広がっています。