前立腺がんに対する社会認識は、近年急速な高まりをみせています。にもかかわらず、前立腺がんの死亡者数は減少するどころか、増加に歯止めがかからない状況です。こうした状況を是正するためには、骨やリンパ節などへの転移がない状態でがんを発見し、適切な治療を実施することが重要になります。
前立腺がん早期発見のため、海外ではPSAを用いた前立腺がんスクリーニングが導入され、実際アメリカではPSAスクリーニングの普及に伴い、死亡者数は年々減少傾向にあります。一方、日本のPSAスクリーニングの普及率は依然として低水準にとどまっており、多くの臨床的に重要ながんが見逃されていることが考えられます。海外ではPSAによる前立腺がん検診の有効性を示すデータが着実に集積されており、今年3月にはエビデンスレベルの高いERSPCの研究の中間報告で「PSA検診受診による死亡率減少効果」が明らかにされました。日本泌尿器科学会では、PSA検診の重要性や受診に伴う利益と不利益について、国民や一般臨床の先生方に対して、引き続き啓発していく方針です。
また、PSAを用いた前立腺がんスクリーニングが、国民にとってより有益なものになるよう、「費用対効果の観点からも最適な検診システムの構築」「生検が必要な症例を絞り込むための補助診断法の確立」「過剰治療のデメリットを減らすためのPSA監視待機療法の標準化と普及」など、現状における課題解決にも学会として積極的に取り組んでいきたいと思っています。