国内導入から10年目を迎えた小線源療法 中高リスク症例にも併用療法で優れた治療成績
深貝 隆志 先生(昭和大学医学部泌尿器科准教授)
森田 將 先生(昭和大学医学部泌尿器科講師)
(メディカル朝日 2012年12月号より)
小さな線源を前立腺内に挿入し、体内から継続的に放射線を照射してがんを死滅させる「小線源療法」は近年普及し、高い治療成績を維持している。そして最近では、中・高リスクの前立腺がんへの適応も珍しくないという。年間100例近い治療実績を持つ昭和大学の深貝隆志先生と森田將先生に、お話をうかがった。
小線源療法とは、放射線を出す小さな線源を前立腺内に挿入し、がんを死滅させる治療法です。挿入後、1年もすれば放射線の影響はほとんどなくなることから、永久的に埋め込んでおいても害はないものです。線量の集中性に優れるのはもちろん、手術のように体を切らずに治せる低侵襲性、および入院期間の短さがメリットです。がんが前立腺内にとどまっている低リスクのものが対象で、手術や放射線外照射と同等の、良好な治療成績でも知られています。併存する疾患がある患者さんや高齢者、早期の社会復帰が必要な若年者にも、良い適応があるといえます。
最近では、単独の治療法では高い治療成績を得難い中・高リスクの前立腺がんに対しても、外照射やホルモン療法を併用しながら、小線源療法を行うことも増えてきました。当院では、中リスク群には小線源+外照射またはホルモン療法の併用が多く(症例によって単独療法も施行)、高リスク群に対しては、小線源+外照射+長期ホルモン療法の組み合わせを行っています。中・高リスク群とも治療成績は良好で、特に高リスク群の場合、手術または外照射単独療法の一般的な治療成績よりも優れた結果となっています。
小線源療法を外照射と併用することで、理論上、生物学的により高い放射線量を前立腺へ投与することができます。また外照射との併用の場合、小線源は線量集中性に優れ、低線量率であることから、高線量を達成しながらも耐容線量に配慮しなければならない周辺臓器への影響を少なくすることが可能になります。さらに低線量率であるがゆえに、ホルモン療法施行期間の長期にわたり放射線療法を併用できることは大きなメリットといえます。またホルモン療法の併用で前立腺の体積は縮まり、照射野が縮小できること、高リスク群が潜在的に備える「微小転移」抑止効果への期待ができることも大きいでしょう。
当院では、2005年から現在まで631例に施行した小線源療法のうち、103例の高リスク症例に対して、小線源療法+外照射+ホルモン療法の併用療法を行いました。放射線治療終了後、2年以上経過した43例をみると、生化学的非再発生存率(5年)は91.1%、全生存率(5年)は83.8%という結果が残っています。