中高年の男性に多くみられる前立腺がん。日本では近年、罹患者数が急増し、2020年には男性のがんで第2位になると予想されています。しかし、早く発見できれば効果的な治療が多く、治りやすいがんともいえます。 前立腺がんの早期発見と適切な治療を推進するブルークローバー・キャンペーンの一環として、シンポジウム「知ることから始めよう!〜前立腺がんの検診と治療〜」が、9月15日にメルパルク大阪ホールで開かれました。専門医による講演や患者さんの体験談、ゲスト講演に続き、講演者全員でパネルディスカッションが行われ、検診の必要性や治療法などについて考えました。当日の模様を紙上採録でお届けします。 |
前立腺がんは他の臓器のがんよりもゆっくり進行します。アメリカは罹患率、死亡率とも非常に高いですが、それらは下がる傾向にあります。一方、日本は早期発見が遅れていて死亡率がアメリカに近づいています。 脳梗塞などで亡くなった方の前立腺を顕微鏡標本にして調べるとごく小さながん、「ラテントがん」が見つかります。近年、ラテントがんの頻度がどの年代でも高くなっています。つまり、前立腺がんはラテントがんの段階で増えているのです。 前立腺がんの早期発見に役立つのがPSA検診。PSAは精液の一成分ですが、がんになると血液中に漏れ出すため血液を採取することで調べられます。群馬県のデータでは、PSA検診で前立腺がんが見つかった人は病期B、Cが多く、何らかの症状が出て、泌尿器科を受診して発見された人より早い段階です。早期に見つけられれば手術ができ、色々な治療が有効です。 PSA値に異常があれば前立腺生検でがんの有無や悪性度を推定します。が |
前立腺がんが見つかると、病理診断の所見やPSA値などからリスクを念頭において治療法を考えます。低リスクがんはグリーソンスコア6点以下でPSA値10以下、肛門から前立腺を触っても硬いものに触れない状態です。この場合は手術、小線源治療、待機療法、ホルモン療法とたくさんの治療選択肢があります。 小線源治療とは前立腺にシードという小さなチタンの針を埋め込み、継続的に弱い放射線を出す治療です。短期の入院で済み、性機能は当面維持できますが、一時的に尿が出にくくなることがあります。待機療法はすぐには治療せずにPSA値を定期的に測って1〜2年様子を見て、必要に応じて治療を検討します。他に病気のある人や、性機能を含めた副作用が心配な方、高齢の方に向いています。 中間リスクはがんが前立腺の皮膜を破って外に出ていない段階です。開腹手術や腹腔鏡などを利用する低侵襲手術、放射線療法があります。 高リスクはグリーソンスコアが非常に高く、がんが前立腺の皮膜を破っているもの。基本の治療は放射線の外照射か手術で、ホルモン療法との併用が通例です。 放射線療法は技術革新が進み、他の臓器を避けて前立腺だけにあてる3次元原体照射、さらに進んだ強度変調放射線治療(IMRT)が出てきています。質の高い放射線治療は手術した場合と治療成績が変わりません。どのような装置で行うかが重要です。 ホルモン療法は抗がん剤に比べると副作用は少なく、他の根治的な治療と組み合わせても使います。前立腺がん治療の副作用は、個々の治療法によって現れ方が異なり、患者さんがその特徴と効果を理解して治療を選ぶことが大切です。 |
4年前に頻尿などの症状があり、泌尿器科を受診しました。PSA検査の結果は147。悪性腫瘍が疑われ、入院して針生検を行うと、11本中10本からがんが見つかりました。前立腺の外にがんが浸潤し、手術はできないと言われ、セカンドオピニオンを受けました。 次の病院で説明されたのは、臨床病期C以上、PSA値20以上、グリーソンスコア8以上が一つでもあれば高リスクということ。すべてに該当する私の場合、画像で転移が見られなくてもがんが散らばっている可能性があり、「5年生存率が2割」と告げられました。 どうしていいかわからずインターネットで治療法を調べ始めました。結果、私の状態だと放射線療法が適していることが判明。前立腺がん専門外来のある病院でサードオピニオンを求めました。同じ症状なのに診断結果は「根治率が50%」。
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私の周りには前立腺がんにかかっている人がたくさんいます。ホルモン療法を受けると筋力が落ちるため、舞台をこなすのは大変ですが筋トレをしたり、治療法を変えたりしながら元気に仕事をされています。そのような人たちを見ていると、がんになってもきちんと前向きに対応すれば長生きできると感じます。 |
厚生労働省の研究班が、PSA検査は集団型検診には勧められない、というガイドラインを出しています。 |
検診にはいろいろなタイプがあります。ある地域のある年代全員を集めて検査するスタイルにはPSAはふさわしくない面があるということでしょう。前立腺がんは比較的高齢者に多く、他にも病気があることが考えられるため、検査は本人の意思に任されます。また生検などの精密検査は約1割の人に血尿などが出るので、それを理解した上で検査してほしいという考えだと思います。 |
PSA値が4〜5や10前後で変化がない場合は? |
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PSAの量は前立腺がんだけでなく、前立腺肥大症などの病気でも上がることがあります。ただ、1〜2年持続して高い場合は、がんではないか、あるいはがんだとしてもあまり進行していないことが考えられます。 |
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前立腺がんの治療法を決める一つの指標は75歳。この年代の日本人男性は、平均的に10〜11年生きられる方が多いです。10年ほどなら当面治療しなくてもすむ場合があります。 |
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セカンドオピニオンを受けられるなら、前立腺の生検標本も持って行ってください。グリーソンスコアの値は一つ違えば予測生存率が10%変わります。正しく評価されているのかも含めて確認されるといいと思います。 |
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セカンドオピニオン外来を設けている病院が増えています。他の病院で意見を聞きたいと思う時に、気軽に行けるのがセカンドオピニオンです。 |
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私が受けた4年前はまだセカンドオピニオンは盛んではありませんでした。今はがん対策基本法ができ、がん拠点病院などで受けられます。ただ、最初にかかられた先生の意見を十分に聞いた上で行くことが大事です。 |
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ホルモン療法の副作用は? |
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ホルモン療法は1940年ごろに発見され、ノーベル賞を受賞した治療法です。前立腺がんの進行にかかわる男性ホルモンを抑え、骨の痛みも消えます。副作用には冷えのぼせ、急な発汗などがありますが個人差が大きい。長期間ホルモン療法をすると皮下脂肪の増加、筋肉量の減少、骨粗鬆症などの問題がありますが、それに対する薬は出てきています。 |
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私の場合は冬でも急に体が熱くなって、汗が吹き出ることが頻繁にありました。 |
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前立腺がんの手術をすると性機能はどうなるのでしょうか。 |
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勃起に関する神経の片側を残せる症例が増え、両側の神経を残せば7、8割の回復率が期待できます。性機能の温存は重要になってきています。 |
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自分の希望を確実に、勇気を出して伝えて、治療を受けられるのがいいと思います。 |
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患者の皆さん、がんになって落ち込むのではなく、元気を出して前向きに生きましょう。私はリレー・フォー・ライフというイベントやビデオでがん患者の語りを集めるプロジェクトにもかかわっています。皆さんも積極的に色々なことに挑戦してください。 |
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