ヨウ素125線源の永久挿入による前立腺がん小線源療法 ~治療に関するQ&A~
治療を受けられる方やそのご家族の方へ

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元埼玉医科大学国際医療センター 放射線科 教授 土器屋 卓志 先生
大船中央病院 泌尿器科・前立腺がんセンター 斉藤 史郎 先生
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放射線が出ていても心配はないのですか?
普通の生活には支障はありませんが、注意を要する点もあります。
前立腺内に挿入された小線源から体の外へ出る放射線は、非常に弱いものです。しかし、身近な人への影響は考えなくてはいけません。退院の際、その方の生活様式から長時間、近距離で接する人が受ける放射線の影響を計算し、問題がないかどうかを確認します。ごく普通の生活ならば、一緒に生活をする人をはじめ周囲の人への弊害は全くありません。
次の表に示すように、生活上自然界や病院での検査による被曝と小線源から周囲の人が受ける被曝量を示したものですが、ヨウ素125小線源療法から受ける周囲の人の被曝量は少ないものです。
ただし、治療後しばらくは次のような注意が必要です。

子供や妊婦との長時間の接触はしばらく避けましょう。
性交は小線源挿入2~3週間後から可能になりますが、小線源が精液中に出ることがありますので、はじめの5回はコンドームを使用しましょう。
主治医の先生から退院時に渡される指示書に記載されたことを守りましょう。
小線源が体内にあることを記したカードを、治療後1年間所持・携帯します。
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転移や浸潤がなく、がんが前立腺内に限局している、すなわち病期Bと言われる場合が、この治療のよい適応です。PSA値が高いなど、病巣の進展が予測されるときには、外からの放射線照射を併用することがあります。また、前立腺肥大症などを伴って前立腺が非常に大きくなっている、あるいは以前に前立腺肥大症の手術の経験があるなどの患者さんには、治療ができないことがあります。
入院して治療は行われます。全身麻酔もしくは下半身麻酔をかけた上で、超音波の画像をみながら、会陰部(陰嚢と肛門の間)から前立腺内へ筒状の針を刺入し、その針を通してI-125の小線源を挿入します。針を刺入する位置、小線源を挿入する場所はコンピューターで計算し て決定されます。
放射線を前立腺内に集中して照射する治療法であるため、大きな効果が期待できます。また、まわりの膀胱や直腸への影響が少なく、副作用は少なくなります。身体への負担も手術に比べて軽く、入院期間は短くてすみます。治療後の性機能(勃起力)は、7割くらいの人で維持されると言われています。ちなみに、アメリカでの10年間の治療成績では、前立腺全摘手術を行った場合と同じ程度の治療効果とされ、高い評価を受けています。
シード治療は重篤な合併症が少なく治療後の生活の質が良い点などが特長として挙げられますが、治療後半年から1年は尿が出にくくなったり、尿が近くなったりなどの症状が時々見られます。
全摘手術と小線源療法は、どちらも限局性の前立腺がんの治療法として確立されています。アメリカで行われている件数はほぼ同じで、同程度に評価されています。それぞれに長所、短所があり、どちらの方が一方的に勝るといったものではありません。年齢やご自身の置かれている状況、またご自分にとって何が一番大切かをよく考え、周囲の方とも相談して決められるとよいでしょう。