安定冠動脈疾患における虚血評価の現状1
中村 先生方ご存じのように、PCI治療は、虚血ガイドで行う方法と冠動脈造影ガイドで行う方法2つがありますが、虚血ガイドで行ったほうが予後の改善効果が高いことが明らかになっています。その代表的な試験がFAME2試験です(図1)。FAME2試験は既に5年経過しており、薬物治療で行った群(赤線)に比べ、虚血ガイドでカテーテル治療を行った群(青線)のほうが予後が良好であったと示されています1)。またCOURAGE試験2)は、安定した冠動脈疾患に対して薬物治療を優先して行う治療戦略と、カテーテル治療(PCI)を優先して行う治療戦略とを比較検討した試験で、その結果は両群には差がなかったというものでした。しかしそのサブ解析3)の結果、心筋シンチで虚血が証明されている症例、しかも虚血が改善した症例は予後が良好であったと示されています。この2つの臨床研究の結果から、虚血ガイドのカテーテル治療が非常に重要であることが分かります。
一方、従来冠動脈の狭窄度は冠動脈造影(CAG)で評価してきましたが、実はこのCAGによる中等度狭窄という判定はかなり曖昧な評価であり、FFRといった機能的な虚血評価と比較して見る(図2)と、90%狭窄であれば概ね8割程度の場合が「虚血あり」となる一方、一般的に有意狭窄と判断していた75%狭窄では、FFRで「虚血あり」と判定された病変は53.6%、さらに50%狭窄になると23.7%とCAGでの評価は、虚血評価とかなりミスマッチが大きいことが分かっています4)。
機能的な虚血評価を行うことが重要ですが、実際の臨床でどのぐらい行っているかをDPCで調査しています5)。その結果、まず一つは実際に虚血評価の行われている割合は、全体の40%弱でした。もう一つは、ある施設は虚血評価を100%行っているのに対して、ある施設は0%というように、非常に施設間のバラつきが大きいということです。なお、虚血評価検査の中で一番行われていたのは、SPECTでした。