機能的虚血評価時代における心筋シンチの使い方2
―FFRでわかること、心筋シンチでみえること―
中村 非常に貴重な研究成果だと思います。先生がお話しになられたように、改めて虚血ガイドのインターベンションの重要性が分かるとともに、残存虚血のないように、完全血行再建をちゃんと行うべきであるということも示していると思います。この結果を見て、実際にカテーテル治療をやる立場から何かご意見ございますか。
横井 インターベンションをやっているものからするとインパクトを感じるデータで、虚血の範囲がすごくPCIの効果に大きな影響を及ぼしていると感じました。それは以前から、COURAGE試験核医学サブ解析でもHachamovitch先生のデータ10)でもそうでしたが、改めてわれわれ日本人でも明らかになったということですよね。FFRは病変の虚血を見ますが、範囲はあまり分からないんですよね。ブランチの0.7もプロキシマルの0.7もその違いは分からない。症状を取るという意味でのPCIはいいのかもしれませんが、予後改善という観点では虚血範囲も併せて見ておかないといけないと改めて感じます。機能的虚血評価には、FFRだけでなく心筋シンチもすごく大事なんだと改めて感じるデータでした。
中村 この5%というのはベストなカットオフポイントだったんでしょうか。
松本 そうですね。逆に5%未満の虚血心筋の改善では有意な差が出てこないということです。もちろん10%以上になればより大きな差が出てくると思いますが、5%以上であれば、検査のアーチファクトなども除外して虚血があると判定していい一つの閾値ではないかなと思います。
上野 FAME試験のPCI実施群は結構残存虚血がありましたから、その後のイベント率は上がっていますよね。ところが、このJ-ACCESS4の虚血が5%未満になった群はイベント率が極めてフラットに近い。プライマリーエンドポイントが若干違うのかなとも思いますが、それがこのJ‐ACCESS4のデータを見たときに非常に印象に残りました。
中村 心筋シンチは、カテーテル治療を行ったあとにやっても残存虚血が分かりますし、改善度を見るなら治療前後に行うことが必要ですが、このJ-ACCESS4から、心筋シンチを前後に行う価値が十分にあることが明確という感じがしますね。
松本 そうですね。2回目の検査を行うことによって、どれだけ虚血を改善できたのか、あるいはどれだけ虚血が残っているのかを見ることができ、治療戦略を立てる一つのツールになると思います。
汲田 一つ質問です。以前のHachamovitch先生のデータで10%以下の虚血ではインターベンションは予後を改善しないということでした。この5%や10%というのはすごく耳に残ってどう扱おうかという話になると思いますが、治療前の10%未満の虚血と5%未満とでは予後は違いましたか。
松本 図6で、最初の心筋シンチで5%未満の虚血しか出ていないC群の予後は、虚血の改善度がよかったA群と変わらないので、虚血心筋が5%未満の患者さんでは、予後は悪くないことが分かります。おそらく内科療法でもよいのではないでしょうか。そして虚血心筋が10%を超える患者さんでは、Hachamovitch先生の論文のとおりインターベンションのメリットが最も強く出るので、 5%から10%の間の治療選択が議論になるかと思います。J-ACCESS4の結果から、5%以上の虚血が証明されていて、そして5%以上の虚血の改善を行えば予後がよくなるので、COURAGE研究の核医学サブ解析に加えてもう一つ提案ができるのではないかと思います。
上野 松本先生、この5%未満の患者さんにFFRをしたら、その血管は0.8以下の数字になる可能性があるんでしょうか。
松本 虚血があるということですので、白と黒で言えば黒になるかと思います。その中で、FFRが0.8未満でインターベンションに回る患者さんも当然いるでしょう。しかし、患者さんの予後がよくなるのか、あるいは5%未満なのでDeferしても予後は変わらないのかを解明する必要があるとは思います。
横井 そうなると、心筋梗塞、死亡、心不全などのハードエンドポイントに関しては多分変わらない。狭心症状を取るという意味においては5%未満の虚血でも症状がある人もいるかもしれない。
松本 はい。その方が微小血管狭心症の可能性もありますけれど。
横井 確かにね。