機能的虚血評価時代における心筋シンチの使い方1
―J-ACCESS4からのメッセージ―
中村 実際に機能的な虚血評価の時代に入ったのは間違いないと思います。では、実際に心筋シンチをどのようにして使えばいいのか。最初のディスカッションポイントは、「フォローアップにおいてこそ心筋シンチが役に立つ」です。これは先ほど横井先生が少し触れられましたけれど、続きをお話しいただけますでしょうか。
横井 先ほどの初診とフォローアップの違いですが、フォローアップの方は冠動脈の解剖学的な所見が分かっていますので、運動できる人は運動負荷、できない人には心筋シンチでフォローして、異常があればさらに冠動脈狭窄をチェックします。初診の方は、予後を考える上で早くアナトミーを把握したいと思いますのでまず冠動脈CTを行いますが、フォローアップになるとアナトミーが分かっているので心筋シンチを使う場面も結構多いです。
中村 フォローアップという観点からすると既にアナトミーが分かっているので、心筋シンチが残存虚血、予後も含めて非常に意義があるのではないか、カテーテル治療後にフォローアップとして心筋シンチがいいのではないかということですね。
カテーテル治療を既に終えた患者さんのフォローアップはもちろんですが、それ以外にも、FFRを先行した場合にはDeferするという場合も多々あるかと思います。実際にDeferした場合、毎年冠動脈CTをやるわけにも、FFRをするわけにもいきません。どのようにフォローアップしていくのかが、われわれカテーテル治療医にとっては非常に重要なテーマです。心筋シンチを行うことでどのようなメリットがあるかを理解しておく必要がありますが、実際に、J‐ACCESS4という興味深い臨床研究がつい最近報告されたと聞いております。松本先生からご紹介いただけますでしょうか。
松本 J‐ACCESS4は、多施設の前向き研究です8)。この研究結果から2つのメッセージが読み取れます。1つ目のメッセージは、心筋シンチを行うことによって冠血行再建術をすべき血管が判定できるということ。心筋シンチは相対的な虚血評価ですが、左室心筋の中で最も虚血の強い部位、血管を同定することに長けていますので、心筋シンチの結果とPCIを実施した病変が非常に高い確率で一致しているということだと思います。2つ目のメッセージは、これはCOURAGE試験の核医学サブ解析9)と一致しますが、5%以上の虚血心筋の改善効果はやはり冠血行再建術群のほうが内科療法群よりも多かったということです。
図6で、A(赤線)の虚血心筋を5%以上低減できた群では、イベントが極めて少ないのがお分かりいただけると思います。次にB(青線)は虚血心筋の低減が5%未満であった群を表していますが、A群と比べると、統計学的な有意差があります。C(黒線)は、治療前の心筋シンチで虚血心筋が5%未満であった群ですが、このC群と、A群の間には、統計学的な予後の差がありません。一方、B群とC群の間には統計学的な予後の差があります。次に図7(A)では、虚血心筋を5%以上改善できた群(赤線)は、5%未満の群(青線)と比べて予後が有意に良かったことが示されております。(B)は、冠血行再建術あるいは内科療法後の残余虚血の有無による予後の違いを見たものです。虚血心筋が0%になった群(赤線)に対して、残余虚血があった群(青線)では、統計学的な有意差をもって予後が不良であることが示されております。そして(C)では、5%以上の虚血心筋があって冠血行再建術が行われた群(赤線)と、内科療法が行われた群(青線)の予後を示しております。虚血心筋が5%以上あればPCIあるいはバイパス手術による冠血行再建術の効果が内科療法に比べて強く出ていると考えられます。