インターベンション医が知っておくべき心筋シンチの撮り方、使い方2
中村 インターベンションをやる立場からすると、上野先生が言われたように実際に心筋シンチの結果を見てからCAGをしてみると、「あれ?一致しないな」という症例がしばしばあるような気がしますが、そういったミスマッチを指摘する前に、負荷が十分に掛かっているかどうかの確認や、アデノシン負荷に低容量運動負荷を併用するだけで、かなり診断の精度が上がってきますよというご指摘を松本先生よりいただきました。
また汲田先生からは、そうは言ってもやはり複雑な病変だと現状の心筋シンチだけでは診断が曖昧になる症例が実際にはある。その原因としては、初回循環抽出率が低い点と、解像度の点で限界があり、それを解決する一つの手としてPETという手段があることをお示しいただきました。お二人の先生のお話を聞かれて、上野先生、横井先生、いかがでしょう。
上野 松本先生がお示しになられたHeart Risk View-Sで虚血範囲が比較的簡単に数値化されていましたよね(図9)。これは非常にいいなと思いました。横井先生、どうですか。
横井 僕らはもう現場で使っていて、カンファレンスの時はこの画像を出します。我々の施設では、心筋シンチの読影に長けた人がいないので、まずはHeart Risk View-Sの結果から入って、それから細かいところを見るような感じですね。若い先生たちにとっても、心筋シンチの初心者にとっても分かりやすいです。
上野 これを3枝病変で解析したらどうなりますか。きちんと評価できるんですか。
松本 左側の心筋perfusionに関しては過小評価される可能性があると思います。しかし、負荷後のEFや壁運動低下などの機能面でカバーできますので、より正しい診断に近づけるのではないかなと思います。
横井 撮像の仕方のことでご質問したいのですが、CTのアクセシビリティに比べると心筋シンチで1日に撮れる件数が限られますよね。これは病院によっての問題もあるかもしれませんが、「2件まで」とか「今日は何件まで」とかよく言われます。そういうことを考えると、2回撮りを1回、すなわち安静時を撮らないで負荷だけ撮るのはどうでしょうか。昨今、安定冠動脈疾患の診療報酬改定後、「検査枠がネックだね」という声を聞きます。1回撮りという可能性についてはいかがですか。
松本 それは十分あり得ると思います。負荷像の結果が正常であれば安静像を省略してよいと思います。実際、安静像と負荷像の2回撮って正常だった患者さんの予後と、負荷像だけ撮って正常だったので安静像をスキップした患者さんの予後が変わらなかったという報告があります12)。これは心筋シンチによる被ばくの低減という意味でも非常に大きな意味があります。
中村 確かに心筋シンチは負荷像と安静像の2回撮るので、1日の件数を制限されることがしばしばあります。そういう点において、負荷像だけで判断するなどの新しい方法が増えてくると、もうちょっと件数を増やしやすくなるのは事実ですね。