心臓画像解析ポケットマニュアル
  • ● 「警告・禁忌等を含む使用上の注意」等については添付文書 ご参照ください。
  • ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
  • ● 本コンテンツで使用している画像提供元:新潟大学 魚沼基幹病院 笠井 督雄 先生

3.心不全

監修・症例提供

笠井 督雄 先生
新潟大学 魚沼基幹病院 循環器内科

LVEFの低下した心不全(HFrEF)
症例1

 

s図1 はDCMによる初回心不全入院例。
LVEF38%、BNP1243pg/mLで心不全改善後退院前にMIBGを施行(A)。
後期像H/M比1.43で中等度低下、WR59%と亢進していた。
ACE阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン剤、利尿剤等にて治療し、6ヵ月後にはLVEF50%、BNP126pg/mLと改善した。
MIBG再検では後期像H/M比1.82、WR46%とMIBGの指標も改善していた(B)。
その後4.5年間心事故は起きていない。

 

図1 MIBG像

A.退院前

  B.6ヵ月後
A. 退院前   B. 6 ヵ月後
Delayed H/M ratio = 1.43
wash out rate = 59%
LVEF 38% BNP 1243 pg/mL
   Delayed H/M ratio = 1.82
wash out rate = 46%
LVEF 50% BNP 126 pg/mL

 

decision making

予後を見据えた心不全の管理にはMIBGが有用である。
後期像H/M比が保たれていればβ遮断薬に耐えられる可能性が高く、H/M比が低いほど重症で予後不良と推定される。
WRは心臓交感神経活性を表しており、高いほど重症で予後不良と推定される1)
治療開始後(6ヵ月後)に2回目のMIBGを行うと、治療効果の判定とその後の予後が明確に予想できる。
特にWRが5%以上改善したかどうかが強力な予後予測因子2)である。

1) Nakata T, et al. JACC Cardiovasc Imaging 2013; 6: 772-84.
2) Kasama S, et al. Nucl Med Commun. 2010; 31: 807-13.
LVEFの保たれた心不全(HFpEF)
症例2

ミトコンドリア病による初回心不全入院例。
LVEF51%、中隔/後壁13.5mm/13.5mmとびまん性の左室肥大を認めるも左室拡張末期径42mmと内腔拡大はない。
BNP935pg/mLでβ遮断薬、ACE阻害薬等を開始。
4 ヵ月後に実施したMIBGでは早期像H/M比1.72、後期像H/M比1.36、WR49.5%であったs図2
この時LVEF59%、BNP199pg/mLまで改善していたが、15ヵ月後にはBNPは540pg/mLまで上昇。
心不全の再発は今のところない。

 

図2 MIBG像
Early   Delay
Early   Delay

 

decision making

本症例は基礎疾患自体予後不良な疾患である。
心不全としてもBNPが経過を通じて一番低下した時期にMIBGを行っているが、後期像H/M比、WRともに症例1より低値を示しており、やや予後不良と予想される。
β遮断薬、ACE阻害薬を開始したにも関わらず、その後のBNPは上昇し続けており、心不全の再発その他の心事故発生が危惧される。
2回目のMIBG検査実施もより正確な予後推定に有用と考えられる。


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