- ● 「警告・禁忌等を含む使用上の注意」等については添付文書 ご参照ください。
- ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
1.心筋シンチグラフィとは
監修
百瀬 満 先生
東京女子医科大学 画像診断学・核医学講座
・心筋シンチグラフィとは、静脈に放射性同位元素を注射し、放出される放射線を撮影して、放射線量をコンピュータ処理して画像にし、心筋の血流やエネルギー代謝などをイメージングする検査である。
利点 |
1.適切なイメージング製剤を選択することで、 心臓に関する様々な生理学的、生化学的情報が得られる 2.負荷検査が容易に行え、検査成功率がきわめて高い 3.侵襲性が低く、腎機能にも影響を与えない 4.定量評価が可能である 5.エビデンスが豊富である |
---|---|
欠点 |
1.検査費用が高価である 2.核医学専用の設備、施設が必要 3.放射線被ばく |
・心筋シンチグラフィは、運動や薬剤などで心筋に負荷をかける方法(負荷シンチグラフィ)と安静時に行う方法(安静シンチグラフィ)の2つに大別できる。
このうち心筋血流製剤を用いた負荷シンチグラフィは、もっとも多く行われている検査であり、一般的に安静時の検査と組み合わせて行われる。また必要に応じて胸部の正面画像(planar画像)を撮り、診断に役立てることもある。
以下に心筋シンチグラフィの一般的な検査法を示す 。
検査方法 |
使用製剤 |
主な用途 |
備考 |
---|---|---|---|
運動負荷 |
Tl(1回投与) |
虚血部位、虚血量、重症度、 |
負荷時の画像と安静時の画像を |
薬剤負荷 |
Tl(1回投与) |
虚血部位、虚血量、重症度、 |
運動のできない患者などに用いる |
安静心筋 |
Tl |
viability、梗塞部位、心機能 |
安静時に、基本的に1回の撮像で行う |
安静心筋 |
BMIPP |
心筋の脂肪酸代謝や |
安静時で2回撮像し評価する場合がある。 (1回目を早期像、2回目後期像という)
|
下肢の運動能力が充分であることが必要である。
運動が不充分であると(最大心拍数×最大収縮期血圧<25,000)虚血の診断能が低下する。
負荷前にきちんと問診を行い、充分な運動が不可能と思われる場合、薬剤負荷への変更が望ましい。
・原則として検査4時間前から絶食する。水分制限は無い。
・抗狭心症薬の当日の投薬は原則中止する。
・運動負荷ではβ遮断薬は前日から休薬することが望ましい。
・薬剤負荷の場合は、カフェインを12時間以上控える。
のように運動・薬剤負荷の禁忌に注意する。
運動負荷シンチグラフィの禁忌 |
---|
急性心筋梗塞症(発症4日未満) |
高リスクの不安定狭心症 |
急性または重症心不全 |
コントロール不良の高血圧症(>200/110mmHg) |
重症不整脈、症候性高度大動脈弁狭窄症 |
急性肺塞栓症または肺梗塞、急性心筋炎または心膜炎 |
大動脈瘤や大動脈解離 |
重症肺高血圧症 |
相対的禁忌 |
左冠動脈主幹部狭窄、中等度の狭窄性弁膜症 |
高度房室ブロック、頻脈性または徐脈性不整脈 |
閉塞性肥大型心筋症などの流出路狭窄 |
左脚ブロック、ペースメーカー(右室ペース) |
薬剤負荷シンチグラフィの禁忌 |
薬物治療抵抗性不安定狭心症 |
ペースメーカー未治療のII-III度房室ブロック |
洞不全症候群・著明な徐脈、QT延長症候群 |
高度な低血圧代償不全状態の心不全 |
コントロール不良の気管支喘息やアミノフィリンの投薬を受けている患者 |
収縮期血圧90mmHg未満 |
アデノシン、ジピリダモールに対する過敏症 |
TlまたはTc血流製剤(TFまたはMIBI)を用い、下記の方法で負荷を行う。
20~40Wから開始し、1分ごとに15~20W上昇する多段階負荷法を用いる。
運動可能のピークと思われる時、または胸痛出現、有意な心電図変化の出現時に心筋血流製剤を静注し、1分間運動を継続して終了する。
但し、高度虚血が出現した場合には1分以内に終了するか負荷量を充分落とす必要がある。
アデノシン薬剤負荷と25~100Wの運動負荷を併用する方法である。
アデノシンは通常通り120μg/kg/minで6分間投与し、運動はアデノシン投与と同時に開始し、25Wから100Wまで漸増し、漸減して終了する。100Wまで漕げない例ではできるレベルまで行う。
また、薬剤負荷に25W以下の低用量の運動負荷を併用するだけでも、アデノシンに起因する軽微な副作用の多くが消失・軽減される上、画質や診断感度の向上が貢献できると報告されている。
2検出器型ガンマカメラを用いた180度収集が推奨されている。
不整脈が顕著でなければ1心拍8~16分割による心電図同期SPECTを実施する。
通常は仰臥位撮像(supine)を行うが、下後壁の集積低下がみられる場合には腹臥位撮像(prone)を追加すると良い。
同部位の吸収の影響が緩和された画像が得られる。
一方、前壁の集積がやや低下する傾向があるため両方の撮像法を考慮して診断するべきである。
仰臥位撮像 supine(通常撮像法) |
180度収集(RAO45º-LPO45º) ・ステップ撮像(6ºstep 30 projection) |
||||
---|---|---|---|---|---|
腹臥位撮像 prone |
|||||
|
supine
|
prone
|
|||
画像提供元:東京女子医科大学 百瀬 満 先生 |