呈示症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
症例6 重症多枝病変の評価
●50歳代の男性。安静時心電図で軽度のST低下を指摘され紹介となる。
●トレッドミル運動負荷心電図で高度ST低下。
●安静時Tl、負荷時Tc標識製剤心筋血流SPECTを行った。(図24)
どう読影するか?
T C 負荷時 |
|
|
---|---|---|
T I 安静時 | ||
図24 |
TID:1.40 |
本症例は通常用いているTlの負荷・安静法やTc標識製剤を用いた安静・負荷法または負荷・安静法とは異なり、Dual isotope法が用いられている。TlはTc標識製剤よりも左室心筋をやや厚く、また左室内腔をやや小さく描出する。図24ではTc負荷時像・TI安静時像共に有意な血流欠損はないが、左室の内腔同士を比較すると明らかにTc負荷時像の内腔が大きい。
ソフトウェアを用いた内腔の比(負荷後の内腔を安静時の内腔で割ったもの)を一過性虚血性内腔拡大(TID)といい、本症例では1.40と異常値である。
TIDが異常な場合にはLMT病変や3枝病変などによる虚血が存在することが多く、たとえ心筋perfusionが正常な場合でも必ず冠動脈疾患の可能性を報告すべきである。
ソフトウェアを用いた内腔の比(負荷後の内腔を安静時の内腔で割ったもの)を一過性虚血性内腔拡大(TID)といい、本症例では1.40と異常値である。
TIDが異常な場合にはLMT病変や3枝病変などによる虚血が存在することが多く、たとえ心筋perfusionが正常な場合でも必ず冠動脈疾患の可能性を報告すべきである。
本症例の冠動脈造影検査ではLAD #5が90%狭窄であった。表1は異常TIDの範囲である。読影にあたって異常心筋量(SSS・SDS値など)に気を配って報告することは重要であるが、LMT病変や3枝病変では有意な血流欠損が描出されずTID異常のみのことがあり、シンチグラフィによる過小評価に気を付けるべきである。
表1 異常TIDの範囲