心筋シンチ読影テキスト 各論

実臨床で役立つ読影のポイント

 初めに画像が読影に適したものであるかを確認するため、SPECT再構成前のプロジェクションデータを確認する。技師に撮像時の体動や、心電図同期エラー、異常な心外性集積の有無・両腕の位置など撮像時の問題が無かったかどうかを尋ねる。アーチファクトが原因で「SPECT像で見えた欠損が実は偽性欠損であった」という場合があるからである。
 SPECT画像の表示法もカラー画像、白黒画像(筆者は黒背景に心筋を白く表示している)の、両方を見ることを勧める。一般的にカラー画像は欠損を見つける感度は高いが、特異度が低い。血流欠損の重症度(severity)を判定するのには、白黒画像表示が有用である。
 左心室は17個のセグメントに分割してそれぞれのセグメントを数値化して左室全体を把握することが推奨されている。本稿では17個のセグメントを図10のように左室の遠位部(心尖部に近い部分)をdistal、左室中部をmid、左室心基部をbase、心尖部をapexと表現する。baseとmidでは左室の6セグメントを時計方向に前壁、前側壁、下側壁、下壁、下中隔、前中隔と表現し、distalは前壁、側壁、下壁、中隔の4セグメントに分ける。正常例(図1)では、負荷時像上段、安静時像下段共に有意な血流欠損を認めない。図2の極座標表示(Polar map、Bu'll s eye mapともいう)も同様に正常である。短軸像だけでも12~13スライスの心筋断面が描出されており、これをapex、distal、mid、baseに分類するには図1の様にセグメントをグループ化する。つまり、読影の際にはdistal、mid、baseは対応する3枚のスライスのそれぞれのセグメントの平均と考えられるスコア(0:正常、1:軽度集積低下、2:中等度集積低下、3:高度集積低下、4:ほぼ無集積)をつける。負荷時のスコアの合計をsummed stress score(SSS)とよび負荷後の心筋の状態を示す数値となる。4未満であれば正常範囲であり重大心事故(心筋梗塞、心臓死など)の年間発生率が1%未満であり、SSS値を意識して読影する。
 各論では実際の画像を通して実臨床で役立つ読影法を身に付けていただきたい。

 

正常例 SPECT画像
図1

 

極座標表示
図2