ダットスキャン静注 症例集2
  • ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
    「警告・禁忌を含む使用上の注意」等については添付文書を参照ください。
  • ● DaTViewによる画像解析は、「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」†を使用することで実施可能です。(† 承認番号: 301ADBZX00045000)
  • ● DaTSCANによるSPECT画像の定量的指標であるSBR(Specific Binding Ratio)は使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって異なりますので、その解釈には十分ご注意ください。

DaTSCANによりSWEDDsと診断した症例  *Scans Without Evidence of Dopaminergic Deficit

症例提供 : 国立精神・神経医療研究センター 脳神経内科 向井 洋平先生
村田 美穂先生**

** 国立精神・神経医療研究センター病院 元病院長

60歳台前半 女性
主 訴
手のふるえ(特に右)、声が小さくなった、手先が不器用になった、動作がゆっくりになった、便秘
現病歴
X-30年  うつを発症。
X-4年  被注意感、被害念慮が出現
X-1年8月  躁症状も出現し他院精神科で双極II型障害と診断された。スルピリド、エスシタロプラム、ゾルピデム等を処方されたが嘔気で中止した。同月末、右手の静止時振戦が出現した。プロプラノロールを処方されたが効果はなかった。
X年2月  右上肢の静止時振戦が増悪し、左上肢にも振戦が出現した。このころから手先が不器用になった。
X年3月  便秘を自覚するようになった。
X年5月  歩く速度が遅くなり、1歩が小さくなった。着替えや入浴時に腕が背中側まで回らなくなった。手先の不器用さのために食事に時間がかかるようになった。
X年6月上旬  アリピプラゾールやピペリデンといった抗うつ薬は中止され、睡眠薬のみとなったがふるえや動きにくさは変化しなかった。同月下旬、他院でパーキンソン病(PD)を疑われた。
X年7月  精査のため当院精神科を受診し双極II型障害もしくは反復性うつ病性障害と診断された。
パーキンソニズムを認めたため、神経内科へ紹介され受診した。
初診時の神経学的診察所見は「マイヤーソン徴候陽性、小声、脂ぎった仮面様顔貌。
静止時振戦は右上肢に常時出現、左上下肢にも間欠的に出現。
指タップ、回内回外運動、踵タップで寡動を認めたが左右差は乏しかった。
歯車様筋強剛は上肢で右優位、下肢では左右差はなかった。 歩行時の両手の振りはなかった。」
治療・経過
後述のDaTSCANの結果からSWEDDsと診断、ドパミン欠乏状態には相当しないと考えた。
念のためレボドパ合剤100mgを1回服用してみたが全く効果はなかった。 精神科にて双極II型障害の治療をまず行う方針となった。
MRI(X年7月)
T2WI
T2WI画像1
T2WI
T2WI画像2
T1WI
T1WI画像
FLAIR
FLAIR画像

 

脳幹や線条体の萎縮は認めない。異常信号も認めない。年齢相応であり、特記事項なし。

99mTc-脳血流SPECT(X年7月)
Original画像
Original 画像

 

大脳平均血流量は左40.9、右42.2mL/min/100gで正常範囲内。
両側側頭葉から後頭葉に若干の血流低下がある。
後部帯状回、後頭葉内側、基底核部、視床、小脳の血流は保たれている。

心臓交感神経シンチグラフィ(X年8月)
Early   H/M比 3.24(閾値 2.2)
Delayed  H/M比 3.77(閾値 2.2)
Washout Rate 3.2%
心筋への集積は保たれている。
DaTSCAN(X年7月)
Original画像
Original 画像1
Original 画像2
DaTView結果画像
DaTView 結果画像

SBRは使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって変動します。

 

両側線条体への集積は尾状核・被殻ともに保たれている。

まとめ

当院神経内科初診時にはパーキンソニズムをきたしうる薬剤は使用されておらず、神経学的診察所見からはホーン・ヤール 2度のPDとして矛盾しなかった。DaTSCANによりSWEDDsと診断したことで、不必要なドパミン補充療法を行うことを避けられた。