ダットスキャン静注 症例集2
  • ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
    「警告・禁忌を含む使用上の注意」等については添付文書を参照ください。
  • ● DaTViewによる画像解析は、「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」†を使用することで実施可能です。(† 承認番号: 301ADBZX00045000)
  • ● DaTSCANによるSPECT画像の定量的指標であるSBR(Specific Binding Ratio)は使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって異なりますので、その解釈には十分ご注意ください。

薬剤性パーキンソニズムとPD/DLBの鑑別が必要であった症例

症例提供 : 釧路赤十字病院精神科 百町 健吾先生、姫野 大作**先生、早坂 郁***先生

現所属 *:こころとそだちのクリニック むすびめ 精神科 **: 砂川市立病院 精神科
***: 北見赤十字病院 神経精神科

70歳台前半 男性
主 訴
姿勢反射障害により歩行困難、仮面用顔貌、流涎
現病歴
X-6年  双極性感情障害の診断により当科入院。炭酸リチウム、抗精神病薬を内服開始、以降継続。
X年3月  手指振戦、寡動を認めた。薬剤性パーキンソニズムが疑われ、クエチアピンからアリピプラゾールへ変更された。この時、数カ月前から目立ち始めたもの忘れについても訪問看護師から指摘される。
X年4月  自宅で食事、水分摂取もできない状態となり、心配した家族に連れられて当科を緊急受診。 上記主訴の他、気分高揚、手指振戦、寡動、小刻み歩行が認められた。 脱水による炭酸リチウム中毒やレビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)の発病、薬剤性パーキンソニズムの鑑別目的に血液検査、DaTSCANを施行した。
治療・経過
血液検査では炭酸リチウム血中濃度は従来通り正常範囲であった。 DaTSCANの結果から薬剤性パーキンソニズムと診断し、アリピプラゾールを漸減中止した。 中止後4カ月の時点では症状の再燃は認められない。
MRI(X年4月)
T1WI
T1WI画像
T2WI
T2WI画像

 

年齢相応のラクナ梗塞が見られる程度で、特に異常は認められなかった。

IMP-脳血流SPECT(X年4月)
Original画像
Original 画像
3D-SSP(Decrease)
3D-SSP(Decrease)画像

 

後頭葉に軽度の血流低下が認められたため、DLBの可能性も考慮したが、症例背景から、この時点ではprobable DLBと診断するには至らなかった。

DaTSCAN(X年4月)
Original画像
Original 画像1
 
Original 画像2
DaTView結果画像
DaTView 結果画像

SBRは使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって変動します。

 

両側線条体ともに集積は保たれており、正常と判断された。

まとめ

当初から薬剤性パーキンソニズムの可能性はあったが、PDやDLBの発症も疑われた。抗精神病薬を漸減している間も症状は続き、補助診断としてDaTSCANを行った。結果からDLB、PDを否定、薬剤性パーキンソニズムの可能性が高いと判断し、治療方針を変更せず、症状の改善をみた。DaTSCANにより薬剤性パーキンソニズムとDLB、PDの鑑別が迅速にできた症例である。