心臓画像解析ポケットマニュアル
  • ● 「警告・禁忌等を含む使用上の注意」等については添付文書 ご参照ください。
  • ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

3.心筋SPECT画像の表示法

監修

松本 直也 先生
日本大学医学部 循環器科

心臓左心室のSPECT断面

一般的な心筋SPECTの表示は 図1図2 のように左心室の3断面(短軸断面、垂直長軸断面、水平長軸断面)を使用する。

 

主な図1

 

短軸断面

垂直長軸断面

水平長軸断面

短軸断面
short
垂直長軸断面
vertical long
水平長軸断面
horizontal long

 

短軸断面
short

短軸断面2

水平長軸断面
horizontal long

垂直長軸断面2

垂直長軸断面
vertical long

水平長軸断面2

主な図2 SPECT画像での虚血域の位置

 

 

黒枠:正常 グレー枠:集積低下
左前下行枝領域(LAD)の虚血

左前下行枝領域(LAD)の虚血

左回旋枝領域(LCX)の虚血

左回旋枝領域(LCX)の虚血

右冠動脈領域(RCA)の虚血

右冠動脈領域(RCA)の虚血

 

主な図3 グレースケール表示とカラースケール表示

 

 

グレースケール

グレースケール表示

カラースケール

カラースケール表示

画像提供元:日本大学医学部 松本 直也 先生

Polar map(極座標表示)

極座標表示は円筒形+キャップ状心尖部で構成される左室短軸像の中心からカウントプロファイルを算出し、各スライスに設定した放射線上の最大カウントを同心円状に並べたものである。
同心円の中心部に心尖部(Apex)が位置し、周囲を左室の心尖部側(Distal)、中央部(Mid)、心基部側(Base)が配置されている 図4

 

主な図4 Polar map(極座標表示)

 

心基部と中央部のSPECT画像
画像提供元:日本大学医学部
松本 直也 先生
単軸断層画像 Polar map
短軸断層画像の中心から引いた放射線上の最大カウントを同心円上の極座標に展開する

 

図5 は負荷後像のLADとRCA領域における血流欠損を示し、心筋虚血は左室の約25%に及んでいる。
Polar mapでは個々の面積が同じではない。本表示法は欠損位置と冠動脈の支配領域との関連を判定するには有用である。

 

主な図5  Polar mapの実例と冠動脈との関係

 

Polar mapの実例と冠動脈との関係

画像提供元:日本大学医学部
松本 直也 先生
 

 

参考:CTAによる冠動脈の走行(AHA分類による)

CTAによる冠動脈の走行 CATによる冠動脈の走行2

 

右冠動脈 左冠動脈
  左前下行枝 左旋回枝
#1 近位部 #5 左冠動脈主幹部 #6 近位部 #11 近位部
#2 中間部   #7 中間部 #12 鈍縁枝
#3 遠位部   #8 遠位部 #13 遠位部
#4 房室結節枝・後下行枝 #9 第一対角枝 #14 後側壁枝
    #10 第二対角枝 #15 後下行枝

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左室のセグメンテーション

図6 の17セグメント分割が推奨されている。

 

主な図6 冠動脈の支配領域

 

LAD:前壁、中隔、心尖部領域 LCX:側壁領域 RCA:下壁領域
SHORT AXIS VERTICAL LONG AXIS
Distal

SHORT AXIS Distal

Mid

SHORT AXIS Mid

Base

VERTICAL LONG AXIS Base

Mid

VERTICAL LONG AXIS Mid

LAD LAD(left anterior descending artery) LCX LCX(left circumflex artery)
RCA RCA(right coronary artery)
 
スコアリング

各セグメントはトレーサーの集積度によって 表2 のように5段階で評価するのが良い。
肉眼的スコアリングでは各セグメントのトレーサーの集積度(%uptake : 最大カウントのピクセルを100とした時のトレーサーの取り込み割合)と欠損面積の割合を勘案する。

表2 にスコアリング基準と%uptakeの参考値を示す(施設によって数値は異なる)。

表1.gif
Seg. 領 域
1,7,13 前 壁
6,12 前側壁
5,11 下側壁
16 側 壁
4,10,15 下 壁
3,9 下中隔
2,8 前中隔
14 中 隔
17 心尖部
表2 スコアと%uptakeの対応(目安)
スコア 集積度合 % uptake 備 考
0 正常範囲 80< ほぼ均一な分布
1 軽度低下 66ー80 わずかな集積低下を示し異常の場合と正常範囲である吸収減弱を表す場合がある
2 中等度低下 50ー65 明らかな集積低下
3 高度低下 35ー49 バックグランドと比較するとわずかに集積あり
4 集積欠損 <35 バックグランドと同程度で集積がない

 

 

SSSやSDSは心臓死、ACS、心不全などの心事故予測因子としての有用性が報告され、LVEFなどと同様に左室全体に占める異常心筋量を定量できる本検査に特有な指標である表3
ASNCガイドライン2018ではSSS、SRS、SDS値を報告書に記載することが推奨されている。
また、これらのスコアを最大スコア(17セグメントでは4×17=68)で除して%表示する方法もある。
特に、SDSを用いた場合は%ischemic(%SDS)として以下の式で算出する。

 

 
%ischemic(%SDS)= SDS ×100(%)
68

 

表3 CAD患者のリスク層別化
CAD重症度 SSS
正  常 0ー3
軽度異常 4ー7
中等度異常 8ー11
高度異常 ≧12
スコアの意味
  1. SSS(Summed stress score) : 負荷時合計欠損スコア
  2. SRS(Summed rest score) : 安静時合計欠損スコア
  3. SDS(Summed difference score) : 心筋虚血スコア
QGSソフトウェア

QGSソフトウェアはGermanoらによって開発された心電図同期心筋SPECT解析ソフトウェアである。
心電図のR-R間隔を 8~16分割し、3次元処理( 図7 )することによって左室機能指標を算出できる(図8 )。

 

主な算出指標
左室拡張末期容積 (EDV) mL
左室収縮末期容積 (ESV) mL
左室駆出率 (EF) %
心筋局所壁運動 mm
心筋局所壁厚変化率 %
拡張能指標 peak filling rate : /sec
1/3mean filling rate : /sec
Time to peak filling : msec など

 

主要な図7 QGSの自動輪郭抽出画面
 
短軸像 水平断面像 垂直断面像
短軸像 水平断面像 垂直断面像
画像提供元:日本大学医学部 松本 直也先生
 

 

主要な図8 QGSによる時間容積曲線と収縮能・拡張能指標

 

QGSによる時間容積曲線と収縮能・拡張能指標

 


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