安定冠動脈疾患における虚血評価を再考する

安定冠動脈疾患に対するCTAの活用の実態

香坂 安定冠動脈疾患に対するCTAの位置づけを、現状では先生方はどのようにお考えでしょうか?

永井 図2は最近発表されたESC 2019 ガイドラインの内容です。この中で、CTAは問診を行い狭心症の原因となるような冠動脈狭窄が無さそうな症例に対し、ルールアウトする手段として推奨されています。一方で、問診の結果、冠動脈狭窄の可能性が高い患者に対しては、 SPECTなどの非侵襲的評価が推奨されています。さらに、既往歴などから確実に狭窄が原因と考えられるような症例については、CAGに加えiFRまたはFFRによる虚血評価を行うことが推奨されています。

ESC2019ガイドラインにおける冠動脈CTの位置付け

香坂 図2の各検査モダリティの位置付けに関しては、我が国ではもう少し広くCTAが用いられているように思えます。ISCHEMIA試験の結果を踏まえますと、 CTAの活用の幅は今後さらに広がっていくのでしょうか。

永井 我が国の現状においては、non-obstructive(非有意狭窄)を確認するためのCTAが頻繁に行われていると思います。さらに、狭窄がありそうな患者に対しては、すぐにCAGを施行するケースも多いように思われます。ESC 2019ガイドラインでは検査前確率を考えた上で適切な検査方法を検討することが推奨されていますが、我が国ではこの点に関する研究があまり進んでいません。これらの現状を踏まえますと、我が国においてもCTAの役割をあらためて考え直す時期に入ったと感じております。

香坂 確かに、全国的なレジストリーであるJ-PCIの2017年までのデータを見ても、何も評価されずにCAGが施行されている症例が50%以上存在しています。今回のESCガイドラインを踏まえますと、虚血評価を適切に行うという点は今後ますます強調されていくのだと思います。CTAとシンチのすみ分けに関する議論はまだこれからも続くのではないかと思われます。