CTAを実臨床に活かす上での留意点
永井 図3はISCHEMIA試験の結果を受けて、2020年にJACC(Journals of the American College of Cardiology)に掲載された米国のレビュー論文の内容です。この中で、安定狭心症患者に対しては、初期治療後のCTAでall or noneを判断し、アテローム性動脈硬化症の患者にはリスク評価を行い、侵襲的なCAGや血行再建術を検討するという流れが提唱されています。例えば、OMT(至適薬物療法)を行っても改善しない症例に対してはインターベンションの適応とすることが提唱されています。ガイドラインとしてはまだ反映されていないものの、CTAをファーストラインで使用する治療戦略が色分けで層別化されているため、非常にわかりやすいと思っております。
香坂 欧米諸国に比べ、我が国はCTAやシンチを数多く有するため、独特の立場にあると思いますが、非常に良い特徴を備えていると思います。中田先生はISCHEMIA試験発表後の虚血評価あるいは冠動脈疾患の評価の在り方についてどのようにお考えでしょうか?
中田 CTAをどのように使うかについては、まだまだ議論が不足していると思います。例えば、心筋シンチで偽陰性となる重症多枝病変例やLMT病変の疑いがあるようなハイリスク症例を鑑別する目的でCTAを使用するのであれば容認されると思います。しかし、造影剤を使用し、被ばくの恐れのあるCTAを除外診断の目的のみで使用することについては、臨床的あるいは医療経済的観点による議論がさらに必要と考えます。また、図3の内容については、狭窄の有無に囚われた考え方だと思っています。すなわち、狭窄の重症度が虚血の重症度や予後に直接関係するという古典的考えに囚われているのではないかと思われます。COURAGE試験やISCHEMIA試験の内容を踏まえますと、機能的虚血も十分に評価した上でインターベンションの必要性を検討していくことが、最近の考え方の本流であると思います。
永井 私も中田先生のご指摘の点については非常に賛成です。たしかに図3は冠動脈の狭窄で層別化しているように思われます。ただし、この論文では薬物療法が適切に行われてきたにも関わらず、コントロール不良な症例に対する血行再建の必要性についてわかりやすく表現されていると思います。また、CTAでは狭窄の有無や虚血の可能性を確認する以外にも、プラークの性状や冠動脈の複雑病変を確認することも可能ですので、CTAの位置づけが今後少しずつ見直されるかもしれません。