ダットスキャン静注 症例集
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  • ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
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脳血管性パーキンソニズム①

症例提供 : 関東中央病院 脳神経内科 織茂 智之先生

現所属 : 上用賀世田谷通りクリニック 脳神経内科

80歳台前半 女性
主 訴
左手のふるえ
現病歴
X-20年 一過性の左下肢の脱力。約1ヵ月で軽快。2ヵ月後から左手の軽いふるえが出現。
日常生活に問題がないために放置。
X-13年7月 当科を初診。神経学的所見では、左手の静止時振戦とごく軽度の姿勢時振戦、左半身の軽度の筋強剛。下肢の腱反射がやや亢進していたがバビンスキー徴候は陰性。その他の神経所見には異常を認めなかった。
表面筋電図では、左手において、4.5cpの振戦が確認された。
治療・経過
レボドパ/カルビドパ 200mgの投与で症状は軽快した。以後、外来で経過観察しており、初診後13年経過しているが、レボドパ/カルビドパ 500mg、アロチノロール 20mg、ビペリデン 3mgでADLは自立。
軽度の左手の振戦と筋強剛を認めるのみである。
MRI

T2WI

T2WI画像

(X-13年)右の中脳に虚血巣を認めた。

心臓交感神経シンチグラフィ

(X-13年)集積は正常で、H/M比も2.61と正常であった。

PET

(X-13年)11C-CFTでは右線条体の集積は全く認められないが、左線条体の集積は正常であった。
一方11C-RACでは左右ともに集積は正常であった。

11C-CFTは123I-FP-CITと同様にドパミントランスポーターに結合するPET製剤である。11C-RACはドパミンD2受容体に結合するPET製剤で、ドパミン系神経伝達機構における節後機能がわかる。両者により節前と節後のどちらが障害されているかを見分けることができる。

*両製剤は研究用薬剤である。

画像提供 : 東京都健康長寿医療センター 石井 賢二先生

DaTSCAN
Original画像(グレースケール)

Original 画像(グレースケール)

Original画像(カラースケール)

Original 画像(カラースケール)


DaTView結果画像
DaTView 結果画像

SBRは使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって変動します。

 

(X年)右線条体の集積は全く認められなかった。SBRは右0.41、左3.09であった。

まとめ

脳血管性パーキンソニズムには3つのパターンがある。(1)大脳深部白質の広範な虚血巣、(2)大脳基底核、特に線条体における多発性の小梗塞、(3)中脳の梗塞である。
本例は黒質を含む中脳の不完全虚血による非常に珍しい片側性の脳血管性パーキンソニズムである。臨床的には運動症状はパーキンソン病と変わらない4.5cpsの静止時振戦と筋強剛が認められた。11C-CFTPETやDaTSCAN画像で右線条体の集積は著明に低下しているが、健常側である左線条体は全く正常であり、これはホーエン・ヤールⅠ度のパーキンソン病と大きく異なる点である。