紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が 同様な結果を示すわけではありません。
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本コンテンツで使用している画像提供元:兵庫県立リハビリテーション西播磨病院
このページ内のコンテンツは症例提供いただいた兵庫県立リハビリテーション西播磨病院脳神経内科医長・認知症疾患医療センター センター長 高橋竜一先生による音声と動画の解説がございます。 本ページ内の「」をクリックすると音声 が、 画像内の「▶」をクリックすると動画 が再生されます。
兵庫県立リハビリテーション西播磨病院脳神経内科医長・認知症疾患医療センター センター長 高橋 竜一先生より
脳SPECT検査の活用事例
強い易怒性や自発性の低下を認め、当初認知症が疑われた進行性核上性麻痺
- ● 診断病名 進行性核上性麻痺(PSP)
- ● 年齢 80歳台前半
- ● 性別 男性
症例の背景
- 受診の経緯
- 最近怒りやすくなったとのことで、認知症を疑い近医受診。精査のため近医からの紹介受診。
- 既 往 歴
- 高血圧、慢性硬膜下血腫、大腸ポリープ
- 現 病 歴
- 心療内科で抑肝散が投与されている。
強い易怒性を認める。1、2年前から下肢の筋力低下が著しく、歩行障害があった。
また後方への転倒も多かった。
日中ぼっとしている。昼寝や横になっていることが多い。
物品呼称は問題無い。
- 神経症状
- 拍手徴候(applause sign)陽性。
上方視時垂直性眼球運動障害、小刻み歩行(+)、後方転倒傾向、姿勢反射障害(++)。
構音障害あり。
立位時注意障害が著明。
両上肢の固縮は無い。
- 神経心理検査
記憶検査 - MMSE:26/30点 ADAS:8/70点 FAB:12/18点
論理的記憶:直後再生 10/50点 30分後再生 5/50点
両側の海馬の萎縮、第三脳室の拡大、脳幹の萎縮を認める。
両側線条体への集積は低下しSBR※も正常平均から4.09SD低下している。
両側前頭葉(➡)の血流低下を認めるが、後頭葉の血流は保持されている。
本例は強い易怒性と認知機能低下で認知症が疑われ紹介となったが、神経学的には構音障害、上方視時垂直性眼球運動障害、小刻み歩行、姿勢反射障害など進行性核上性麻痺を疑う症状がみられた。
神経心理検査ではMMSE 26点と軽度認知障害の状態。論理記憶検査では直後再生が10点、30分後再生が5点と比較的注意力や、近時記憶障害は保たれていた。
MRIでは海馬の萎縮を認めたが、第三脳室の拡大、脳幹の萎縮を認め、パーヒューザミン®注脳血流SPECT検査では前頭葉の血流低下、ダットスキャン®静注脳SPECT検査では両側線条体への集積低下を認め、進行性核上性麻痺を裏付ける画像所見であった。
本疾患の認知障害は前頭側頭型認知症の特徴を示すことが報告されている。本例のように易怒性などの精神症状がみられることがあるので、前頭側頭型認知症との鑑別にも注意を払う必要がある。