違いのわかるSPECT診断シリーズ 8 ADと非ADの鑑別 編

AD
「警告・禁忌を含む使用上の注意」等については添付文書を参照ください。
紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
3D-SSPによる画像解析は核医学画像解析ソフトウェアmedi+FALCON*を使用する事で実施可能です。
(*認証番号:301ADBZX00045000)
本コンテンツで使用している画像提供元:熊本大学

症例4 AD
失語が前景に立ち Semantic dementia(SD)注3)と診断されていたAD

注3)FTDページ下図参照

 

患者背景

 

70歳台前半 右利き女性

 

主  訴  言葉が出にくい
現 病 歴 X-2年より会話中に言葉が出にくい様子に気付かれた。徐々に日付がわからなくなり、料理が苦手となった。自宅でテレビばかり観て過ごすなど自発性が低下する一方で、些細なことで怒りっぽく、同居する姉との喧嘩が増えた。 言葉の出にくさは徐々に増強し、趣味でやっていたミニバレーの道具をみても「これは何?」というようになった。認知症の精査加療を希望してX年6月に近医精神科病院を受診し、意味記憶障害、頭部CTにて左側頭葉の萎縮を認めたため、SDが疑われ、X年7月に精査加療目的に当科紹介受診となった。
神経所見  ●特記すべき所見なし
神経心理所見  ●MMSE:19点  CDR=1
 ●強い喚語困難、復唱や理解は良好
 ●軽度~中等度の近時記憶障害
 ●構成障害(+)
精神症状  ●病識の欠如
 ●自発性低下
 ●易刺激性
POINT
鑑別ポイント
確かに喚語困難は非常に強いが、言葉の理解は良好である。
一方、非言語性の記憶テストでは軽度~中等度の近時記憶障害が認められる。

 

矢印

MRI画像
臨床症状と形態画像との不一致
本例のMRI画像を左に、対照として初期のSD例のMRI画像を右に示す。SDでは、グリオーシスが進行すると側頭葉底面に特徴的な所見(萎縮が強い方の底面が挙上)が認められ、ADとの鑑別に有用である。しかし本例のようにごく初期では明らかな変化はみられない。

 

矢印

 

本例R
IMP-SPECT/3D-SSP解析画像R

 

SD例L
IMP-SPECT/3D-SSP解析画像L
機能画像による臨床症状の裏付け
脳血流SPECT/3D-SSP解析により、SDではごく初期であっても側頭極から底面にかけて限局性の著しい血流低下が認められる。これに対して本例では、側頭極の血流低下は軽度であり、また頭頂側頭連合野にかけても病変が広がっている。この所見は臨床症状とも矛盾せず、本例はおそらくAD病圏の失語が前景に立つタイプであると考えられる。