Q6.うつと診断した後、家族に対する指導の原則として大切な点を教えてください。
認知症が背景にみられず、うつのみが存在する場合と、認知症の経過中に抑うつ症状がみられる場合では、指導のしかたに若干の違いがみられます。
認知症を伴わないうつ患者さんへの対応の原則
1「うつ病は病気である」ことを説明する。性格や怠けから生じているのではないと伝える。
2心的エネルギーの低下が主体である→心身の休養を勧める。
過剰に励まさないよう指導することも大切。
過剰に励まさないよう指導することも大切。
3自殺をしないことを約束させる。自殺防止につながる。
4人生の重大な決定に対しては棚上げ、延期すること。
5適切な治療によって改善するケースが多いことを伝える。
6抗うつ薬などの服薬の必要性とその副作用をわかりやすく説明する。
認知症の経過中に抑うつ症状がみられる患者さんへの対応の原則
1叱る、怒る、元気を出すよう励ますなど強い対応は有効ではないことを家族に理解させる。
2患者さんの状態をみながら周囲からの働きかけを行う。患者さんの行動や意欲の低下がすべて 抑うつ症状から生じているとも言えないので、ケースバイケースでの誘導や働きかけが必要。
3判断力の低下が原因で自分の意思を決定できないことが多いので、周囲の人々がその都度適 切なアドバイスを行う。
4症状は一過性のことが多いので気長に介護を行う。
5抗うつ薬などの服薬の必要性とその副作用をわかりやすく説明する。
まとめ
認知症診療では、認知症とうつとの鑑別や認知症の経過中にみられる抑うつ症状について理解しておくことが重要です。しかしながら、臨床症状だけでは認知症とうつとの鑑別が困難な事例に遭遇することがあります。
その際、脳SPECT検査が両者の鑑別に役立つことを経験します。うつの脳血流異常に関して確立したものはないようですが、アルツハイマー型認知症では頭頂葉後部あるいは後部帯状回での血流低下がしばしばみられることが明らかになっています。両者の鑑別が困難な事例でこれらの領域に脳血流低下がみられるとき、少なくともアルツハイマー病変が存在していることが強く示唆されると思います。脳SPECT検査を施行することによって、その後の治療方針の確立に役立つことが期待されます。認知症疾患の鑑別に際して脳SPECT検査は有効なツール1)となります。
1) 日本神経学会 認知症疾患診療ガイドライン2017 P39, 医学書院